〜シュー編〜

 

強い衝撃とともに目が覚めた。

たしか久々に我が家のベッドに潜り込んで、ぐっすり眠りこんでいたはず。

それなのに、今は見覚えのない車内に、見覚えのない風景。

 

こういうことが起きるのは、大抵あいつらが絡んだ時だ。

 

でも、ここしばらく穏やかな毎日が続いていたから、どうも頭がついていかない。

 

なんとなくポケットに手を突っ込むと、四角い物体に指が触れた。

 

どこかで見たような柄。

 

危険信号だ。

 

判断を誤らないよう、慎重にいかなくては。

 

とりあえず自分が置かれている状況をしっかり把握しようと車外に出て、ふと見上げると、あいつらの写真に大きくバツのついた看板。

当然のように俺も含まれている。

 

今度は一体何をしたんだ?

 

そう思った瞬間、バサッと物音がして、ロングコートを翻して走って行く女性の姿が目に入った。

 

逃げるってことは、何か知ってるんだよな?

 

俺は慌てて彼女の後ろ姿を追った。

 

*****

 

彼女を追って飛び込んだのは、路地に並んだ廃墟の一つ。

 

倉庫のようなつくりだが、当然中はガランとしている。

 

カンカンと響く足音に辺りを見回せば、殺伐とした倉庫に相応しい金属製の螺旋階段が階上へ向かって伸びている。

 

この寝起きの体で、急激に体力を消耗する必要性があるのかどうか。

 

そんな疑問がチラリと頭を掠めたが、最早悠長なことを言っている場合ではない。

 

あいつらが絡んだら、シャレで済まないことが多々あるからな。

 

息を切らせながら階段を上り終えたら、明かりの見える方へ向かった。

 

*****

 

なんだコレは!

 

僅かな月明かりが照らし出したのは、部屋の壁に張り出された無数の写真。

 

全て映っている一人の顔がくり抜かれて、別の顔に変えられている。

 

今回は、本当にヤバイかもしれない。

 

部屋の異様さにぶるっと身を震わせた時、さらに奥の部屋からガラスの割れるような音がした。

 

さっきの女か?

 

急いで窓に駆け寄れば、彼女はすでに窓から隣の建物に飛び移っていた。

 

距離は近くはない。

 

大した身のこなしだ。

 

彼女が階段を駆け降りる姿を見て、深呼吸してから意を決し、隣の窓めがけて体を放り出した。

 

*****

 

やはり寝起きにはかなりキツイ。

 

飛びそうになった意識を、頭を振って呼び戻した。

 

そして階段を駆け降りる。

 

果たして追うべきなのか。

 

彼女は罠ではないのか。

 

目が覚めてきて、冷静になった頭が働き出した時には、すでに時遅し。

 

目の前には、今まで追っていたのとは別の、以前から知っている『彼女』が立っていた。

 

しかも大勢の仲間を後ろに従えて。

 

そして気が付くと、俺の横にもあいつらが。

 

やはり巻き込まれた!

 

早く『犯人』を引き渡して、逃げた方がいいに違いない。

 

静かに告げた。

 

「誰だか知らないが、早く謝れ」