でっかい化け物はシャンデリアから身軽に飛び降りて、あたし達の前を通せんぼした。

 

微妙に隙間があるから、あそこから逃げればいいんだけど、その為にはこいつの気を散らせる必要がある。

 

「僕がおとりになるから、その隙に逃げて。」

 

ヒヨコぉぉぉぉぉぉ!!!

 

そんな事言うなよ。確かにヒヨコは身軽だけど、心臓病は大丈夫か!?

 

「俺がおとりになる!」

 

うわあ!ビックリしたよ!!いきなり濃い人が現れたよ!!

 

「シュー!」

 

ヒヨコとカッパが感動したような目で、シューの濃い顔を見つめてる。

 

いやあ、あたしだって感動したぜ?

 

流石、年長さんだぜ!

 

「さあ、俺の事はいいから、お前達は逃げるんだ!」

 

そう言って、濃い人は怪物目掛けて突進してった。

 

よし!逃げるぞ!!!

 

 

ドアの前に辿り着いて、ドアを半開きにしたところで3人同時に振り返った。

 

ごふっ!!!

 

濃い人ぉぉぉぉぉ!!!

 

こ、濃ゆいお顔が床に落ちてるわよ??

 

って、首ちょんぱ!?

 

「シュー・・・」

 

カッパもヒヨコも泣きそうな顔してるけど、ごめん、なんか・・・ウケる!!!

 

いや、そんな事言ってる場合じゃないんだって。

 

「二人とも早く!シューの犠牲を無駄にしちゃダメだよ!」

 

あたしは二人を必死に引っ張って外に出してから、ドアをしっかり閉めた。

 

「助かった・・・。」

 

みんな地面にへたり込んでため息をついた。

 

シュー・・・首ちょんぱだったけど、カッコ良かったぜい。

 

 

「はあ、疲れた。二人とも、ちょっと家で休んでく?」

 

あたしの家がここから一番近い。

 

「うん!ゲームの対戦しようよ!」

 

「こら、カッパ!勉強の続きをするんだぞ。」

 

って、こいつら今までの事、無かった事にしようとしてるだろ?!

 

ま、いっか。

 

我が家は、洋館が見えるちょっと高い丘の上に立っている。

 

白い壁の、典型的なアメリカンハウスだった。

 

「おかえり。」

 

玄関を入るとダディーが現れた。最近ちょっと太り気味の、どこにでもいるアメリカ人のおっさんって感じだ。ちょび髭がキモイ。

 

「お父さん、なんかあの洋館、やばい事になってたよ。」

 

ぞう告げると、ダディーは眉をひそめて「what?」とつぶやいた。

 

「ゾンビがうようよしてる!」

 

カッパが横槍を入れる。邪魔だお前。

 

ダディーはもう一度「what??」と言ってから慌てた様子で奥の部屋へ消えてしまった。

 

「えへ☆ヒヨコ!」

 

おおっと、出たよ。

 

「やあ、元気そうだね!」

 

爽やかな笑みでヒヨコはあたしの妹に挨拶した。

 

爽やかすぎてミントの香りがどこからか漂ってくるぜ!

 

「お前達!!」

 

ダディーが手に汚い鏡を持って現れた。

 

「パパ!あっち行って!せっかくヒヨコの爽やかな風に浸ってたのに、もうぶち壊し・・・」

 

妹よ・・・わけわかんない事言ってるぞ。

 

爽やかだろうがなんだろうが、所詮はヒヨコだ。

 

「パパ、泣いちゃうぞ。」

 

ダディーキモイ。

 

「いや、そんなことより!館の封印が解けたんだ!あの館には悪しき者が封印されていたのだが、お前達、館に入ったな?」

 

ギクッ!

 

「再び封印をしなければいけない!この鏡に月の光を集めなさい!」

 

いつの間にか真っ暗になっている空に浮かぶ月を指差して、ダディーはふんぞり返った。

 

「ただし、心の通じ合う者同士でなければいけないよ。」

 

それだけ言うと、鏡を残してダディー退場。

 

「心の通じ合う者同士?」

 

後に残されたあたし達4人は互いの顔を交互に眺める。

 

ここはやっぱり・・・

 

「僕と彼女が行く!」

 

ええええええええ?!

 

マイスウィートエンジェルちゃん、何を言い出すの?!

 

ってか、妹!!お前はヒヨコじゃあ・・・?

 

「うん、そうしてくれ!」

 

ヒヨコも認めちゃってるし!

 

あたし、立ち直れないかも・・・。