シャーロック・アカゲと名乗ったワカバの友達は、住み心地が悪くなった故郷を捨ててこのサバンナに仲間たちと群れを成してやってきたそうだ。するとサバンナの動物を密猟していた3人組が、今度は彼らを狙い始めたとのこと。そして一緒に群れていた31匹のうち、とうとう彼が最後の1匹になってしまったらしい。

仲間たちの写真を見せてもらったが、なるほど、ショッキングピンク、ビリジアン、マゼンダグリーンとかなり目立つ毛色の連中である。

これだけ目立つ毛色で、あれだけのブッシュ・ラビリンスを作れるほどの頭脳の持ち主だ。狙われてもおかしくないだろう。

アカゲ君は写真の中のショッキングピンクの犬を指差して言った。

「彼女、我輩の婚約者なんだ。なんとかして助け出さなければならないよ、ヒヨコ君」

うすうす気づいていたが、どうやら彼はシャーロック・ホームズ気取りらしい。そして僕をワトソン氏に見立てているようだ。なかなか自尊心が強そうなので、会話にも気遣いが必要である。「アカゲ君」という呼び方は、僕の心の中のみにとどめておこう。

「仲間が捕らえられたのはどの当たりなのかな?」

すると、アカゲ君は僕が持っているものよりもずっと解像度の高い衛星写真を取り出した。

「このマイ・スウィート・ブッシュから北北西に半マイルほど行ったところだよ、ヒヨコ君。・・・君、もうちょっと何とかならないかね、そのしゃべり方」

「・・・・・・!!!」

ワトソン!ワトソンらしさを要求されてる!!!

「善処します・・・」

「ふん。まあいいだろう。ではレッドヘア・ユニオン作戦で行くから、説明をよく聞きたまえ!」

ジーザス!『赤毛同盟』ですか。ホームズおたく丸出しなんですけど。

僕の愛読書は聖書。推理小説みたいなのはあんまり得意じゃないんだ。彼の手助け任務に僕が適任だとは思えないよ。ワカバは何を考えてるんだ・・・。

レッドヘア・ユニオン作戦は、案の定『赤毛同盟』からヒントを得た・・・というか、赤毛同盟の存在を語った連中の手口そのまんまなんですけど。

「いいかね、ヒヨコ君。君はこの手紙を渡して、彼らにこの電話帳の名前を写す仕事を与えるんだ。場所はこのゴザ広場。地図はほら、これを準備しといたから手紙と一緒に渡してくれ。道具はこちらで用意しておく。彼らの隠れ家から一人残らずおびき出して、その隙に我輩が折から仲間たちを解放する算段だ」

「・・・・・・。仕事の報酬はなんて言えばいいんだい?」

「・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・。わかった。僕がなんとかするよ」

アカゲ君は、ホームズよりもホームズに暴かれる犯人の影響を受けてるんじゃないだろうか。

しょうがない。僕なりにこの作戦をしっかり補強して成功させるしかないようだ。こういう仕事は、多分シューのほうが得意なんだと思うんだけど。

僕はアカゲ君にナイショで、「一匹狼の優秀ハンターが最後の一匹を捕まえたが、彼が別の仕事で苦戦してる。今日中に彼に代わって仕上げてくれたら、その最後の1匹と金貨300枚を進呈する」という内容に手紙を書き直した。さらに制限時間を「今日の日が沈むまで」と付け足した。現在午後2時。今日の日没はどうやら19時くらいのようなので、ゴザ広場への移動時間も考えると、アカゲ君の計画している仕事量では3人がかりでやっても厳しいだろう。仕事の中身も、「ファースト・ネーム、ファミリーネーム含めて、同じ母音が3つ以上入ってる名前をリストにする」ことにした。

そもそも本当にならず者3人組であるならば、こんな話に乗るはずもなく盗みにやってきそうな気がするのだが、任務の内容が手助けである以上アカゲ君の作戦を根本から変えるわけにはいかない。

不安だらけの作戦だが、僕は精一杯気丈なフリをして3人組の隠れ家に向かった。