ジープに揺られながら、僕は茶色い封筒の中身を取り出して見ていた。
地図は3枚。正確に言うと1枚は衛星写真みたいなもので、犬の横顔のような形をしたブッシュゾーンの中央当たりに赤いサインペンで丸がしてあって、「このへん」って書いてある。
残り2枚のうち1枚は、このジープを運転してくれてる人の家までの地図だった。館のある丘を降りて、森の中の一本道を300メートルくらい行ったところで右に入って道なき道を進んでいくと、彼の赤い屋根のログハウスに辿り着いた。そこからずっと、ただ無言で僕を案内してくれてるが、とっても優秀なガイドだ。というか、優秀なガイドのような気がする・・・。いや、なんていうか、彼は馬にしか見えないのだけど、うん、車をちゃんと運転してるんだよな。不思議だ。
最後の1枚はブッシュゾーンの道順。どう見ても迷路にしか見えないんだけど、本当にこんな風に木が生えてるんだろうか。そもそも、本当にサバンナにこんなブッシュゾーンがあるんだろうか?
そして肝心のワカバの友人の写真なんだけど・・・。
写真は写真でも、これ、誰かが書いた絵を写真に撮ったものだよね?細めの筆で、一本描きしてあるんだけど、かなりヘタクソ・・・いや、前衛的だ。これでちゃんとわかるのかなぁ・・・。
そうこうしてるうちに、突然ジープが止まった。
「ヒヒ〜ン!」
ジープから降りてみると、枯れて葉っぱは見当たらないけど確かに低木がかなりの範囲で密集して生息している。
「ヒヒ〜ン!」
もう一度声を上げると、案内をしてくれていた彼はお礼を言う間もなく車を発進させて行ってしまった。やっぱり馬にしか見えないんだけどな。
砂煙を上げながら去っていく車に向かって手を振ると、地図を片手にブッシュ・ラビリンスに足を踏み入れた。
枯れているから木々の間でも一見して見渡せるんだけど、ワカバの友人らしき人も、その友人がいそうな場所もわからない。どうやらこの地図の指示通りに歩いていかなければならないようだ。
地図はなんのことはない迷路の地図で、分かれ道や行き止まりはほとんどない。道なりに歩いていけばいいようだが、途中3箇所ほど通る順番を守って、やらなければならないことがあった。
10分ほど歩いたところで1つ目のチェックポイントに行き当たった。
「え〜と・・・地図によると、<幹の高さ3cm程度のところに足形がついている木の根元にある穴に「国王の耳はワンコの耳」と3回言うこと>だって。なんだ、それ」
王様の耳はロバの耳じゃあるまいし、とかいいながら指定された木と穴を見つけ早速実行した。すると、足形の印が消え、ポコッと音を立てて穴も消えてしまった。
「とりあえず、コレでクリアってことかな?」
確認のしようがないので先に進む。
次のポイントは、1つ目のポイントからさらに10分くらい進んだところ。日が高くなってきて、ちょうど一休みしたいと思っていたところで、僕の目に小さな泉が飛び込んできた。
「<幹の高さ3cm程度のところに足形がついている木に、水を1すくいかけてから「国王に水を1滴プレゼント」と言うこと>だって。国王って木のこと?」
よくわからないが書かれている通りにすると、背後から「ウォッフ!」と犬の鳴き声のような音が聞こえて振り返ったが何もいない。そして、1つ目のポイントと同じように木についていた足形も消えてしまっていた。
「さあ、もうひと頑張りだ」
よくわからないことだらけだけど、考えてもしょうがない。そのまま次のポイントを目指す。
最後のポイントは、2つ目のポイントから10歩くらいしか進んでいないところにあった。近すぎだ。
「なになに?<ゴザを敷いてお昼寝>ってなんでゴザ?」
見渡してみると、そこら中にクルクルと筒状に丸められたゴザが積んである。手近なものに手を伸ばそうとして、ふと隣のやや太めなゴザに目をやると、足型がついていた。
「今までの指示通りに考えたら、こっちだよね」
はじめ手に取ったゴザを置いて足型付きゴザに手を伸ばすと、その重みによろけてしまった。さっきのよりも明らかに重い!!!
慎重にゴザを抱えて、木の生えていないスペースの中央に辿り着いたとき、急にゴザがガタガタと動いて、僕はゴザを投げ出すような格好で転んでしまった。すると・・・。
「アイタタタタ・・・。もうちょっと慎重におろしてくれたまえ!」
ゴザに包まっていたらしい、長い赤毛のアフガンハウンドが胡坐をかいたような状態でお尻をさすっていた。
「はじめましてヒヨコ君!待っていたよ。僕はワカバの友人シャーロック・アカゲだ。」
名前がそのまんま過ぎ!!!