密猟者たちの隠れ家は、アカゲ君の仲間が捕らえられたスィート・ブッシュ(彼がそう連呼していた。Sweet homeと同義らしい)から北北西に半マイル行ったところから、さらに北東に1kmほど行った所。
なんだかマイルとかキロメートルとか混在して、わけがわからなくなってきたよ!
僕は1時間ほどかけて、アカゲ君がどこからともなく出してきた昔風の前輪がやたらデカイ自転車にのって、そのならず者がいるはずの隠れ家に到着した。
小さなテントが張ってあって、入り口の前には折りたたみ式の長いすに寝そべったサングラスの男がいびきをかいている。
足元には、賢そうだがアカゲ君と違ってしゃべったりしそうもない、ツヤツヤな毛並みのドーベルマンが飼い主と同じく静かな寝息を立てている。
テントの横には真っ赤な小型のトラックがとめられていて、兄弟らしき15,6歳の少年が2人で車洗いながら水遊びしていた。いや、水遊びがてら車を洗ってるのか?
その少年たちは、僕の目立ってしょうがない自転車を見つけると歓声を上げながら走り寄ってきた。
「わぁ!珍しい自転車に乗ってるね!」
「乗らせて!!!」
ならず者たちの子どもだろうか。無邪気で素直そうな少年たちである。
「いいよ。気をつけて乗ってごらん」
彼らのうち1人がトラックの2台から慎重にサドルに腰を下ろすともう一人が支えた。
「ところで、ここには何人住んでるんだい?」
「パパと僕ら、あと犬のチャーリーが一緒だよ」
「3人と1匹だけ?」
「そうだよ」
「ほんとに?」
ニコッと笑いながら話しかけると、どうやら兄らしき方の子が小首をかしげながら答える。見た目のわりに、言動に幼さが見られる。
「う〜ん・・・。なんかね、パパが捕まえてきた変な犬もいるよ。やたら大きくて、とってもカラフルなんだ。パパがサンドイッチ食べてたら飛びついてきたの。パパはここからちょっと行ったところで地質調査してるんだけど、そこでランチ食べるとどこからともなく現れて、ついて来ちゃったんだ」
密猟者って聞いてたんだけど・・・話がちょっと違うような気がする・・・。
すると、自転車に乗っていた弟らしき方が慌てて静止した。
「ダメだよ、お兄ちゃん。パパが誰にも言っちゃダメって言ってたじゃん」
「どうして?」
またニコッと笑いながら尋ねると、今度は弟の方がぺらぺらとしゃべりだした。
「パパがね、珍しい犬だから、研究所に連れてくんだって。その犬たち、すぐ食べ物釣られちゃうから、悪いやつらが儲けるために捕まえられたりしないように、誰にも話しちゃダメだって」
密猟じゃないじゃん!
僕は兄弟に事情を話してパパを起こしてもらい、もう一度事情を説明した。
「それがですね。彼らは元いた場所に返そうとしても全く動いてくれないのですよ。よっぽど飢えてたんでしょうか・・・」
どうやらアカゲ君の仲間たちは、このたまたま遭遇した研究者が美味しいものを色々と与えてくれるので、今の生活を気に入ってしまったようである。
小さなテントの裏にもともと親子が生活していた大きなテントがあって、彼らはそこを占拠して悠々自適な生活を堪能していた。
「すいません・・・。30匹も養うのは大変だったかと思うんですが・・・実はもう1匹取り残されてるヤツがいるんです・・・」
僕は来た道を戻ってアカゲ君に仲間たちの様子を話し、再び親子のテントに戻った。
「アイリーン・ピンキッシュ!僕を置いて楽しい生活を送ってるなんて、酷いじゃないか!」
「だってそのうちあなたも来ると思って」
恋人たちの再会である。
(アカゲ君の婚約者の名前・・・インパクトあるなぁ)
***
さて、その後のアカゲ君と仲間たちだが、あの研究者が帰国するのに合わせてアメリカに渡った。
アカゲ君たちは、彼ら専用の自然と食料が溢れる居住地を提供される代わりに研究に協力することで合意し、「こここそが我輩たちの新天地だ!」と狂喜乱舞していた。
僕はというと、「今回の任務は一体・・・」とややブルーな気持ちになった。
あの恥ずかしい練習をした「さわやかフラッシュ」も全く出番がなかったように思う。(出番があるとは思えないが)
まあ、とりあえずミッション・コンプリート!
***
館では…
「ヒヨコが戻る前にアカゲから手紙がきたぞ。うまく行ったようだ」
「アイツ、かなりクセがあるからな。ヒヨコを派遣して正解だったぜ」
「多分無意識にさわやかフラッシュを使ったでしょうね」
話題の尽きないお茶会が繰り広げられていました。