8月の夏休みムードがまだまだ館に残るある朝。僕はワカバに呼び出された。
ワカバのそばにはキャプとウィッカが控えていて、思い思いに欠伸をしたりへんな機械をいじったりしている。
「この夏はキャプの仕事をフォローしてくれたそうだな」
椅子にどっしりと構えたワカバは、相変わらず威厳がある。
「その上、今はアナベルにくっついてまわられて大変だろう」
「え・・・ええ、まあ・・・」
そういえば、たいていこういったシチュエーションではキャプの横についているはずのアナベルがいない。何か別の仕事をしているのだろうか。
「そこでだ。おまえに任務を与えよう。サバンナにいる友人が、密猟者で苦労してる。助けてこい」
なにが「そこで」なんだろう?今の状況から想像するに、絶対にアナベルに付きまとわれて仕事どころじゃなくなるに決まってる。ものすごく不安になったのだが、すかさずキャプが補足した。
「安心しろ。アナベルにはたっぷり仕事を押し付けてある。思う存分仕事できるぞ」
なるほど。でも任務の中身がワカバの友人の手助けって、AD6の任務としてはおかしいよね?なんか都合よくこの状況を利用されてる気がする・・・。
「詳細は追ってキャプが説明するだろう。支度を5分で済ませてキャプのオフィスに行くように。以上だ」
ワカバは僕の戸惑いなどお構いなしにしゃべると、椅子ごとくるりと後ろを向いてしまった。
てか支度に5分!?無茶だ!!!
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大慌てて何とか支度を終えると、キャプのオフィスに向かった。
オフィスの前の部屋では、キャプの秘書であるアナベルが書類の山に埋もれながら仕事をしていた。恨めしそうな目でこちらを見ている。どうやら会話も禁止されているらしく、話しかけてこない。
「入れ」
奥の部屋から僕の来室を察したらしいキャプの声に促されて、僕はすんなりとアナベルの前を通過した。拍子抜けするほどスムーズだ。
部屋に入ると、キャプがデスクに座ってバスケットボール雑誌を眺めていた。ウィッカもデスク後方のウッドチェアに腰掛けて、ヒトデみたいな生き物を伸ばしたり縮めたりしている。
この人たち・・・やる気ない!
軽くショックを受けながらも前に進み出ると、キャプがポン、とA4サイズの茶色い封筒をデスクに投げ出した。
「ハイ。これに地図とワカバの友達の写真入ってるから。行ってきて」
コレだけーっ!?
任務があることを告げられたとき以上に驚く僕をよそに、キャプはウィッカに呑気な質問をしている。
「ウィッカ。なにか秘密兵器ある?」
「いや。ヒヨコには何もないよ」
いややいやいやいや!
この間、シューには必殺技伝授してたよね?カッパにも何か秘密兵器作ってるって言ってたよね?なんで僕にはないの!?
口をパクパクさせてるところに更なる追い討ち。
「とりあえず、こまったときは笑顔でね♪」
本当に意味がわからないから。
「なに?不安?じゃ、練習しとこうか」
館の中では比較的まともだと思ってたのに、ウィッカも相当おかしいらしい・・・。
「はい、せーのっ、スマーイル!!!」
「スマーイル!(ニコッ)」
よくわからないけど、とりあえず僕のためにやってくれてるのだろうから合わせてみた。
「破壊力が足りねーな」
よくわからないコメントだけ言って、キャプはデスクの上の雑誌に意識を戻してる。
ムリムリ。破壊なんてできるわけがない。
「キメ文句がダメなのね、きっと。じゃあ変えていくわよ」
キメ文句ってなんですか。だって笑うだけだよね。
しかし館のガールズたちにつっこんでも意味を成さないことを、ここ数ヶ月の生活で学習済みだ。僕は黙って従った。
「さわやかフラーッシュ!!!」
「・・・えええっ!?」
「ほらほら、しっかり」
「さわやかフラーッシュ!(ニコニコッ)」
「まあ、いいだろ」
かくして、ここに僕の必殺技「さわやかフラッシュ」完成したのだった。
なんか頼りないなぁ・・・。