もう一度ステージに目を向ければ、今度は濃い人をあっつい視線で見つめるワカバ。

あっ!逃げたっ!

あたしの唯一の目的だった彼は、ケモノに恐れをなして逃げていきました。

ちっ。つまんねーの。

席があるけどスタンディングで見てたあたしは、たちまち興味がなくなって、ストンと席についた。

呑気にワカバの暴走でも鑑賞するか。

ふと濃い人を見るとワカバを見ながらガタガタ震えてる。

お、おい!マジっすか?本気と書いてマジですか?!

ワカバが濃い人の方に顔を向けて、ペロリと舌なめずりをしたから、もう大変。
濃い人は歌ってる途中だってのに、マイクを放り出して一目散に逃げてった。

そりゃそうだ。それが普通の反応だ。

観客の間にざわめきが起こる。

おいおい、薄い人がいなくなった時は反応なかったじゃん!
まあ、影薄いから仕方ないか。

ワカバは獲物を逃がしてしまった!って顔で辺りをキョロキョロ。

それにしても、どうして皆ワカバに気付かないの?

は!!もしかして薄い人を食べた事でその薄さを吸収した?!

んなバカな!!

だけど、本当に誰も気付かない。
そしてワカバはこっそりとキリンの後ろに回り込んでまた、大きく口を開けた。