その日、あたしはある古びた洋館の図書室で、試験勉強をしていた。
ここは誰も住んでいなくて廃墟みたいになってるけど、中はキレイで意外に使いやすい。
なんでか分からないけど、その地下に大きな図書室があるんだな。
静かで、勉強にはもってこい!
「ヒヨコ!ここがわからない!」
横でクラスメートのカッパがヒヨコに勉強を教わっている。
相変わらずなベイビーとママのコンビだ。
「ねえねえ、この間のテスト何点だった?」
話かけるな、カッパ!気が散る!
「新しいゲーム買ったんだけどさ、今度やりに来いよ!キャンディー相手じゃ弱くって…」
うるさい!だけどそれはちょっと気になるぞ。
そう思ってカッパを見ると、満面の笑み。
くそっ!カッパのくせに!!天使の笑顔浮かべやがって!可愛いじゃねえか、こんちきしょー!
「カッパ、彼女の邪魔しちゃだめだよ」
おおう!こっちにも天使様が!聖歌隊のヒヨコのくせに、好青年じゃねえかよ!
「ママ・・・じゃなかった、ヒヨコ。あたしもここがわかんない。」
数学の問題を聞いた。どこ?と言って覗き込む彼。うん、近くで見てもヒヨコ!
何を思ったのか、カッパまでもあたしの問題集を覗き込んできた。
うおおおお!!そんなに近づくな!!
くそう、近くで見るとますますタイプだぜ!その垂れ目!そのつり眉!ちょっと厚めの唇!頭悪そうな顔!!
「ちょ、ちょっと、カッパ君。君は自分の問題解こうね?」
慌てて無理矢理前を向かせた。
ちくしょう、不覚にもときめいちまったじゃねえか!このカッパが!!
ヒヨコがおかしそうに見てるのが気になったけど、とりあえず勉強せねば!
そんな事を考えてたら、いきなり廊下からものすごい音がした。
「??」
皆、なんだろうって顔でお互いを見合わせた。
「様子見てこようか。」
ヒヨコが立ち上がる。
お、お、お、おい、ちょ、ちょっと・・・。
「待った!!!」
カッパと声を合わせて叫んだ。気が合っちまったぜ。
「きっとゾンビだ!」
カッパは目を輝かせて言った。喜ぶなよ。怖ぇえよ。
「危ないから、皆で行こうよ!」
ふざけんな!あたしゃ行かんぞ!って、おい!置いてけぼりはもっとイヤ!!
「じゃあ、ヒヨコが先頭ね!」
おっと、またカッパと気が合っちまった。お前も結局怖いんじゃねえか!
「わかったわかった。」
苦笑いされちゃったよ。ママに。
そーっとドアを開けて覗き込んだけど、何もないみたい。
ちょ、ヒヨコぉ!廊下は危険だってば!そんなに出てくなよ!
だけどやっぱり何もいない。
廊下の真ん中くらいまで来て、引き返す事にした。
振り返った瞬間、カッパが「うわあ!」と悲鳴を上げる。
な、なんすか〜?!こ、こ、怖いじゃん!やめて!!
「キリン!!」
カッパの愛らしい視線の先には、立った今もトリップ中なのか、フラフラしたキリンの姿。
なんの冗談っすか?!
キリンはなんかゾンビみたいな動き方であたしに抱きついてきた。
ちょ、ちょっと、そんな、カッパが見てる前で・・・。
「って、こら!」
あたしの肩に噛み付こうとしたキリンを背負い投げで投げ飛ばす。
ふっ、すまんなキリン。あたしにはカッパという心に決めたスウィートが・・・。
キリンは、なんで地下なのにあるのかわからない窓の外に放り投げられた。
アデゥー!!ヤク中!
「なんか様子が変じゃなかった?」
ヒヨコが心配そうに割れた窓の外を眺める。
いや、ヤク中だし、様子が変もなにもないでしょう。
心の中でそんな突っ込みを入れてたら、うちらがいた図書室のドアがカチャリと開いて、ゾンビご一行様が現れた。
あ?何これ!?
大量のゾンビご一行様は「あ〜〜」とか言いながらゆっくり歩いて来る。
やめて〜〜!!まだ死にたくないっす!
って、ゾンビご一行様の中に見つけたその男。
流石、影が薄いだけあってこんな登場かよ、プラント!!
しかし、うちらは逃げるぜ、薄い人よ!
慌てて廊下を突っ走り、階段を駆け上る。
速い!速いよヒヨコ!流石だぜ!風のような男だぜ!
って、置いてくな〜〜!!!
「こっちは大丈夫だよ!」
ヒヨコは振り返って手招きをした。
そうか、逃げ道を確保してくれてたんだね、流石はヒヨコ!!
「地下への階段はしっかりカギ掛けたし、もう大丈夫じゃないかな。」
ママの天使の微笑み。
うわあ!眩しい!眩しすぎるよ、ヒヨコ!!うちの妹だったら失神してるよ!
でもなんだか落ち着かないカッパ。
そんなにキョロキョロすんなって。もう大丈夫だよ。ほら、あたしが抱きしめてあげるから。
なんてくだらない妄想してたら、カッパが「あっ!」と言って天井を指差した。
あたしとヒヨコも一斉に天井を見る。
おいおいおいおい!!!
こ、これはちょっと・・・てかかなりヤバイんじゃないの?!
天井に釣り下がったシャンデリアの上に、巨大な茶色い毛を持つ怪獣が乗っかってた。
うわあ、ここで終わりだ〜!あたし達も例のウィルスでゾンビになって彷徨っちゃうんだ〜!!