1224日の午後1150分。

大ボスのワカバは、塔のてっぺんに皆を集めると、一言言い放って去って行った。

目の前には、様々な形状の釣り竿が用意されている。

これも訓練の一環なのだろうか。

 

よく考えたら、俺は釣りの経験がなかった。

中国で修行していた頃、魚もよく捕っていたが、気配を消して素手で掴んだり、気を飛ばして気絶させたりしていたので、釣り竿に手を触れるのも初めてだ。

こういうのは、氷に穴をあけて釣りをしていたヒヨコが得意なはずだ。

隣に立っているヒヨコを横目で見ると、相変わらずの微笑みを湛えている。

今日のところはヒヨコに教えを乞うのが適当だろう。

「ヒヨコ・・・俺に釣りを教えてくれ!」

「ん〜。優しい心で釣ればいいんだよ〜」

瞬殺。

ヒヨコの教えは難解で、全くわからなかった。

 

そうこうしているうちに、キャプとカッパが早くも釣り糸を垂らしていた。

Wiiで釣ったことあるもんね!」

「らくしょ〜♪」

な・・・。釣りくらい、誰もが嗜んでるっていうのか!?

俺もまだまだ修行が足りないらしい。

意外にもキリンまでが余裕の動作で釣り竿を振った。

ここは俺も思い切ってやるしかない。

釣り竿を選んでいるヒヨコの隣に並んで、見よう見真似で準備をし、墓場に釣り糸を垂らした。

 

10分後、いくら待てども、誰の糸にもプレゼントはかからなかった。

いや、ヒヨコは何度もアナベルを釣り上げているが、それはプレゼントではない。

一体どうやったら釣れるのか。プレゼントはどこらへんにあるのか。

釣り竿をあまり動かさないように気を配りながら墓場を見下ろすと、キリンが愛用している網を振り回しながら跳び回るプラントがいた。しかし網には何も入っていない。プラントは不穏な気を隠す訓練をすべきだ。

カッパは相変わらずキャプと、かっこいい竿の振り方研究で大騒ぎ。キリンは釣りに飽きて踊りだし、ヒヨコは釣り糸を垂らしたままのんびりと星の観察を始めている。

もうじき「草木モ眠ル丑三ツ時」になるっていうのに、このままじゃ今年のクリスマスはプレゼントなしになってしまう。

その時、月に住む月兎という妖怪の家に遊びに行っていたウィッカが、ホウキに跨って帰ってきた。

「みんなして何やってんの?」

スルリと窓から進入して室内に降り立つと、ウィッカが不思議そうに尋ねてきた。

「「フィッシング・プレゼント!」」

キャプとカッパが揃って答える。いつの間にか息がぴったりだ。

「へぇ・・・」

尋ねておいてさほど興味がなさそうに応えるウィッカ。欠伸をしながら階下に向かおうとしている。

そういえばウィッカはクリスマスよりもハロウィンが好きって言ってたな。

彼女は去り際に呟いた。

「でもプレゼントは動かないから静かに垂らしてても意味がないんじゃない?」

確かに!!!釣りに慣れてそうなヒヨコの真似をしてたけど、見習うべきはキャプとカッパだったんだ!

ウィッカの呟きを偶然耳にしたのは俺だけじゃなかったらしい。キリンを必死の形相で竿を振り始めた。

何とかして、糸の先についたフックにプレゼントを引っ掛けねば!

 

「やった!」

一番に釣り上げたのはキャプだった。

フックは見事にリボンの付いた小さな金属の物体を釣り上げている。

「これは・・・ハーレーのキー!!!」

キャプは小躍りしながらガレージに走っていった。

「いいなぁ・・・」

カッパはプレゼントそのものよりも競争に負けたことが悔しそうな感じだ。

そうこうしているうちに、次はキリンの糸に何かがかかった。

「ッしゃーっ!」

かけ声とともに勢いよく引き上げる。

「・・・・・・!!?」

釣れたのはアンデッド。墓石の下でぐっすり寝ていたのに安眠妨害されてかなり腹を立てているようだ。

「のォォォォォォォ!」

頭からかぶりつかれたまま、また釣り竿を振るキリン。

プレゼントが釣れるまで体力が保つのか!?

次にかかったのはカッパ。

しかし引き上げたのは、小さなタイヤキだった。

「ぼく、サンタさんに新しいゲームソフトお願いしたのに・・・」

半ベソでタイヤキにかぶりつく。

「しっぽにアンコ入ってない・・・」

「落ち込むなカッパ!まだゲームソフトは誰も釣り上げてないぞ!」

どこからともなくキャプの叱咤激励が聞こえてくる。

そしてとうとう俺の糸にも何かがかかった。

アンデッドだとイヤなので、下を覗き込みながら慎重に持ち上げると、フックは一冊の本の赤い麻布でできたカバーに引っかかっていた。フックが外れてしまわないように、そろり、そろりとゆっくり引き上げていく。

そしてようやく手にした赤い物体の表面を調べると、そこにはタイトルが記されていた。

『今から実践!楽しいお友達の作り方』

凝れ、欲しかったんだ!

何度も買おうとして本屋に足を運んだが、恥ずかしくて買えなかったその本を、ワカバはちゃんと知っていたのだ。

さすが大ボス。感謝します!!!

みんなにタイトルを見られないよう本を抱きしめると、そっと自室に戻ったのだった。

 

翌朝、朝食のためにダイニングに行くと、昨晩の釣りの結果がわかった。

キリンはやたら暗くなっているから、あのままアンデッドしか釣れなかったことが一目瞭然だ。

プラントは何を手に入れたのか知らないが、満面の笑みを浮かべている。

カッパは、どうやらあのあとキャプの助言でゲームソフトをゲットできたようで、みんなに見せびらかして回っている。

一時はどうなることかと思ったが、今年もステキなクリスマスになった!

 

 

☆フィッシング・プレゼントの結果☆

 

キャプ:すぐにでも乗り回せるハーレー

ヒヨコ:アナと眺める満点の星空・・・プライスレス!

キリン:アンデッド15体(ワカバ「コナ吸ってるから釣れないんだよ!」)

シュー:欲しかったマニュアル本

カッパ:ゲームソフト(希望とは異なる『タイヤキくん危機一髪』という変なゲーム)+タイヤキ4個

プラント:???

 

 

おしまい

悪魔の屋敷のクリスマス

christmas wallpaper

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