今日はワカバの誕生日。
と言ってもプレゼントはお決まりのビーフジャーキーなんだけど。
何にもないよりマシだろうと思って、庭にある犬小屋へ向かう。
庭に抜ける窓を開けようとしたら、話し声が聞こえてきた。
ど、泥棒?!
「なぁ、ワカバよ〜、もっと粉ねぇの?」
「ねえよ!あったとしても、ただじゃな。」
「ちっ、何かと交換ならいいんだな?」
「モノによる。」
えぇ?!
恐る恐る覗いてみると、なんか見知らぬおっさん(?)がタバコみたいのを吹かしながらワカバと会話をしてるじゃありませんか!!
ど、どういう事?!
てか、何でワカバが喋ってるの!?
「まあ、とりあえず中に入れや」
ワカバはそう言うと小屋に引っ込んだ。
それを見届けてから、見知らぬおっさん(?)は辺りを見回して、誰もいないのを確認し始める。
え…ちょ、ちょっと待ってよ!!
あたし、あの人知ってる!!道草少年団のス●ーピーみたいな顔したキリン!!
そんな事を思いながらカーテンの影に隠れて見てると、キリンは腰をかがめてワカバの小屋に頭を突っ込んだ!!
ま、まじ?!
何してるの?ヤクがまわっちゃった!?
次の瞬間、キリンが消えた。
え?
あたしは不思議に思い、庭に出てワカバの小屋を調べてみた。
な、何これぇ?!
よ〜く覗き込むと小屋の置くには、下へ続く階段があるじゃないですか!!
そんなバカな〜!!
思わず小屋に首を突っ込むと、勢いが強すぎたのか、そのまま階段を落下した。
いてて…。
腰を強く打ったみたい。それでも痛みを堪えながら立ち上がると、そこには『雀荘・若葉』と書かれた怪しげなドアが…
恐る恐るドアノブを握り、中を覗き込んだらもう、びっくり!!
煙がすごくて、ぼやけてるし!しかも変な匂いする!!
皆、タバコみたいなものや白い粉を吸って虚ろな目をしてる。
てか、何人か客がいる事が一番驚きなんですけどー!!
一体いつの間にうちの庭の地下にこんなスペースを?!
あたしはそっと中に入り込んだ。幸い、みんなイッちゃってるから気付かないみたい。
ワカバを探して雀荘の店内を突き進むと、カウンターみたいなところの奥に、さらに下に行く階段を見つけた。
音を立てないようにゆっくり階段を下る。
それは長い長い階段で、もしかして永遠に続くんじゃないかと思った時、薄暗い中に突然鉄製のドアが現れた。
そっとドアを引くと、ギーって音がしてゆっくり開いた。
「ワカバ〜?」
心細くなって飼い犬の名前を呼ぶあたし。
だけど返事なし。
中に入ってみたけど、そこは本当に小さな地下室で、ガランとしていた。
だけど!!
見つけてしまった!!!
むき出したコンクリートの壁に張られた数々の写真!!
これって、路地裏少年団の写真だよね?
なんか違和感を感じてよくよく見てみると…
うわっ!!!
シュー、キリン、ヒヨコにカッパと並んだその写真。
プラントが立ってるはずの場所に、顔だけワカバで体が人間の変なのが写ってる!!
他の写真も見てみたけど、全部薄い人の顔だけがワカバに刷り変わっていた。
き、気持悪っ!!
気分を害して、あたしは来た道を引き返した。
あー、嫌なもん見ちまった…
雀荘に戻ると、ワカバとキリンが並んで立っている。
「じゃあ、プレゼントやるから粉くれよな?」
「だからモノによるって言ってんだろ」
あたしはカウンターに隠れながら、二人の様子を伺った。
カチャリとドアの開く音がして、見ると影の薄いアイツが!!
「やあ、キリン!こんな所に呼び出して、どうしたんだい?」
例の、マヌケにも見えるSWEETな笑顔を浮かべるプラント。
そして、その横には何故か、キャンディー大好きのぼくちゃんが!
「まあまあなプレゼントだな」
ワカバはそう呟くと、ものすごいスピードで薄い人の足元に移動して、大きく口を開けた。
パクリ。
えぇ!?
た、食べちゃったよ!!
プラントを、丸飲み!!
ありえねーだろ!!
ワカバは満足そうに舌なめずりをしてから、今度はぼくちゃんに向き直って大きな口を開く。
次の瞬間、信じられない事が起こった!
「キャンディー!!」
ぼくちゃんが嬉しそうに微笑みながら、自らワカバの口の中に飛び込んだのだ!
うわ〜、そこにキャンディーはないと思うけどなぁ…
ワカバはちょっとびっくりした顔をしてから、また満足そうに舌なめずり。
くるりとキリンに向き直り、白い粉が入ってる袋を渡す。
「へへっ、そうこなくちゃ!」
おいおい、キリン!ヤク中から立ち直ったんじゃないのかよ。
そう思った時!
「キリン!!またそんな事して!ダメじゃないか!!」
きっとプラントの後をこっそりつけて来たんだろう、爽やかな風と共にヒヨコが現れた。
「僕も、それはいけないと思う。」
ヒヨコの横からぴょこっと顔を出したのは、愛しのカッパちゃん!
これでシューも混ざれば、道草少年団大集合だね!!
なんてくだんない事考えてたら、ワカバの目がキラリと光り、また高速で移動を始めた。
な、なにする気?!
パクッ!!!
どわぁぁぁぁ!!!!
ワカバ!!!
許すまじ!あたしの愛しい愛しいカッパを!!
く、喰いやがった!
しかも一口で!!!
ん?
ちょっと待って、さっきも誰か食われてた気がするけど、気のせいだよね?
まあいいや。
ワカバはヒヨコに向き直り、また目を輝かせた。
でも、さっきの獲物を狙う瞳とは少し違う。
「クーン☆」
ぎゃーー!!!
な、なにあれ!?
あいつ、犬のくせにネコかぶってヒヨコの足下にすり寄ってる!!
「いい子だね〜」
ヒヨコ?!
可愛いカッパが喰われたのに、いい子はねぇだろ!!
てか、ム○ゴロウかお前は!!
「ねぇ、キリン。その粉はこの子に返して、一緒に帰ろう。」
片手でワカバをなでながら、もう片方の手を差し出すヒヨコ。
キリンは少し迷ってるみたいだったけど、あきらめたように粉の袋をワカバに突き付けてヒヨコと一緒に去って行く。
こ、これって感動のシーンじゃない!?
しかし、とんだヒューマンドラマだな、こりゃ。
どーしょもないと思いながら視線を横に移したら…
ヒヨコ達に気を取られてて全然気付かなかったんだけど。
なんかあたしの隣りにとっても濃い顔の人がいたみたい。
一緒になってカウンターに隠れて皆を見てた彼は誰にも聞こえないようなか細い声で「俺も仲間に入りたかった…」と呟いた。
そのつぶらな瞳には、薄っすらと涙さえ浮かべている。
シュ、シュー…
なんて切ない!
皆、君が大人すぎるからってあんまりお誘いしてくれないんでしょ?
可哀相に…
あたしは思わずシューの肩をぽんと叩いて、頷いてしまった。
シューは「わかってくれるか?」とでも言いたそうな目で、あたしを見た。
あたし達はなんだかよくわからない友情のようなものが芽生えるのを、確かに感じたんだ。
いらないけど…
「麻雀でもやって帰るか?」
なんでそうなるのかわかんない!
でもあんまりにも可哀相なのでついつい首を縦に振った。
二人麻雀は寂しいけど、ヒヨコとキリンは帰っちゃったし、カッパとそのキャンディーフリークな弟はうちの犬に喰われちゃったし、仕方ないか。
ん?
なんだっけ、誰か忘れてる??
え〜と、え〜と…。
気のせいだよね!
-おしまい-