クリスマスも終わり、慌しい年末を迎えた12月30日。
窓から差し込む柔らかい太陽の光で、オレは清々しい目覚めを向かえていた。
「明日はなんの日か知ってるか?」
着替えをすませ、階下に向かう途中でバッタリ顔を合わせたシューに、期待を込めて問いかける。だが、ヤツはオレの目を避けるように視線をずらして呟いた。
「大晦日・・・」
そう!明日は大晦日。しかし同時に、オレにとってはスペシャルな日だ。シューはどうやらまだ寝ぼけているようだ。もともと口数の少ない男だし、これ以上問い詰めるのはやめておこう・・・
ダイニングに入ると、ヒヨコのヤローが爽やかな笑顔でアナとなにか話していた。
「YO!!明日は何の日だ?」
二人は同時にこちらを見たが、そのまますぐに何事もなかったかのように話し始める。アナはわかるが、ヒヨコまでシカトかよ?!
煮え切らない気分のまま、席に付く。皆が集まり、いつものように遅れてきたカッパがキャプに叱られた後にまた、切り出した。
「なあ、明日は何の日だと思う?」
大晦日!!口をそろえてそう言われ、頭にきた。明日はオレの生まれた日、つまりバースデーだ。忘れたとは言わせねえぜ?
大声でそう言ってやろうと思い、口を開きかけたが、キャプに遮られた。
「おい、キリン。大掃除は終わったのか?お前の事だからまだ、なーんもやってねえんだろ?明日まであるなんて余裕かましてるとあっという間だぞ。年が明ける前に片付けろよ」
その通り!だけど問題はそこじゃねえ!
だが、結局は誰の口からも誕生日のBの字すら聞くことができなかった。その日は皆忙しく、夜になってもオレの存在など眼中にないように慌しく動き回っていた。
こうなりゃ、一人バースデーパーティーを開いてやる!日付が変わった深夜0時。半ば自棄っぱちで白い粉に手を伸ばす。
実家にいた頃は毎年このパターンだった。両親はかわいい息子の誕生日を祝ってくれたことが一度もなかったんだ。そりゃ、グレるわ。
*****
大掃除を終えて、ダイニングでキリンのバースデーパーティーの準備が完了したのが午前0時を少し過ぎた頃だった。
「ねえ、そろそろキリンを呼んでこようよ!」
カッパが早くキリンの驚く顔が見たいとばかりにそう言ったので、あたし達は揃ってキリンの部屋のドアを叩いた。
・・・・・・・。
返事がない。寝てしまったのかと思い、ドアをそっと開くとそこには虚ろな瞳でブツブツとおかしな事を呟くキリンの姿があった。
「ハイジー、オレって可哀相な男だろ?ペータはわかってくれるか!さすがだな!!」
これはひょっとしてトリップ中?!
見るに見かねたアナがハート型のステッキを振りかざす。すると、大きなハート型のシャボン玉が出てきて、アルプスの風景を映し出した。
「これ、キリンの脳内?」
ウィッカが関心したように見入る。彼女だけじゃない、皆の目はその映像に釘付けになっていた。
青々と生い茂る草原に黄色や白のかわいらしい花が咲き、空は深いブルー。純白の雲が眩しい。バックにはまだ白い雪が残る山々が堂々とそびえ立っている。そして草原のど真ん中に小さなテーブルとイスが置かれていて、じいさんと小さな男の子、そして二人の女の子座っている。一人の女の子は車椅子のようだ。
「私たちはお祝いしてあげるよ!毎年そうしてきたじゃない!!」
黒い髪の押さない少女がうつむくキリンの膝に置かれた手を握る。励ましているらしい。だってキリンの目には涙が光っている。
「ハイジの言う通りよ。それに、見て。私この日のために練習したの」
車椅子に腰掛けいた少女がそう言って、テーブルに掴まりながらゆっくりと立ち上がった。それを見ていたキリンは、涙を引っ込め驚いた表情になる。
「クララ・・・クララが・・・」
立った!アルプス一同の表情が感嘆に染まった。
だからどうした?
「クララ・・・オレ・・・最高のプレゼントだぜ!ひゃっほう!!」
クララという少女に駆け寄り、抱き上げるキリン。ちょい待て!脳内でワケのわからない感動のシーンを繰り広げるのはやめてくれ・・・
ふと横にいるカッパを見ると、大きな目に薄っすらと涙を浮かべていた。マジ?!
慌てて道草のヤツらを見回すと、みんな涙目になっている。感極まって・・・そんな表情だ。だけど、あたしには彼らの感性がよくわからない。なんとなく冷めた気分でプレゼントをドアの前におくと、まだ感動冷め遣らぬといったみんなを残してその場を後にした。
*****
いつの間にか眠っていたらしい。気が付くと空が薄っすらと明るくなっている。もう少し眠れるなとは思ったが、何故か空腹を感じて身体を起こす。食い物でも探しに行くか。
ドアを開けるとなにかにぶつかりコツンと音がした。不審に思い、足元を見るとそこにはプレゼントの山ができている。これはひょっとして・・・
一つを掴み取りラッピングをビリビリ破くと、現れたのはオレ愛用のB系ブランドCap WEARのメインロゴ、クラウンを象った大振りのネックレスと、そのマークが入ったスタジャン。これはきっとキャプからだ。あいつ、このブランドのデザイナーとか言ってたし(疑わしいが)。
次のプレゼントを開ける。シューからと思われる『基礎から始める少林寺』という分厚い本(いらねー!!)、ヒヨコからと思われる手編みのマフラー(気色悪ぃ!!)カッパからと思われる駄菓子詰め合わせセット(オレにどうしろと・・・?)それからアナからと思われるコケモモ一年分(腐るわ!!)、たぶんウィッカからだろう、なんだかわからない機械(マッサージ機か?!)、そしてワカバからは雀荘フリーパスポート!(これはマジに嬉しい!)プラントからは奇妙な鉢植えが・・・(食虫植物?!)
あいつら・・・こんなサプライズしやがって!感動したじゃねえか!!
いつの間にか朝食の時間が近付いていた。オレは上機嫌でスキップしらがらダイニングへ向かうと、勢いよくドアを開ける。皆すでに揃っていて、プレゼントの礼を言おうと口を開きかけたオレの顔を見た途端、一斉にこう言った。
「キリン、感動をありがとう!!」
おしまい