「お兄ちゃんところに行くのと、(精神科の)ドクターのところでお世話になるの、どっちがいい?」
ニコニコしながらママがそうたずねた。パパもおだやかなかおをくずすことなくボクをみつめている。ボクはホットミルクのカップをそっとテーブルにおいた。
パパとママはいつもニコニコしてるけど、ボクはしっている。ふたりとも、もうボクをおうちにおいておきたくないんだ。ワケはよくわからないけど、ボクがよなかにトイレにいきたくてめがさめたとき、パパとママがつかれきったカオしてドアのところにたってボクをみていたのだ。ボクがおきたのにきづいて、すぐにいつものえがおにもどったけど。
「ドクターはいやだ。ボクおにいちゃんといく」
そばでウサギのぬいぐるみとあそんでいたいもうとが、うれしそうにキャッキャとこえをあげた。
パパとママも、はりついたようなえがおのまま、こころなしかほっとしているようにみえた。
それがほんのみっかまえのハナシ。
いま、ボクはおにいちゃんとボチのおくにそびえるヤカタをながめている。ブキミなトウには、とてもキャンディがいっぱいあるようにはおもえない。
お兄ちゃんには「にんむ」がある。でも、キャンディのないヤカタで、パパにもママにもみすてられたボクはなにをしてすごしたらいいのか。
「キャンディがいっぱいあるといいな」
やさしいおにいちゃんは、ボクをみてニッと笑った。
そうだ。まだキャンディがないときまったわけじゃない。たとえキャンディがなくても、ボクはおにいちゃんの「にんむ」がうまくいくよう、しっかりおてつだいするぞ!
おもたいドアをおしてなかにはいると、まっさきにぼくのめにとびこんできたのは、ヘンなカオをしたクサだった。
「おにいちゃん・・・。このヤカタ、あぶないんじゃない?」
しんぱいになってみあげると、おにいちゃんは、だいじょうぶだ、って。ホントかな?
ちょっとふあんだけど、ボクがおにいちゃんをまもってあげるんだ!おにいちゃんにが「にんむ」にシュウチュウできるように。
ボクはモスキートをやっつけるときみたいにかべにクサをたたきつけてから先を歩くおにいちゃんをおいかけた。
まずはボスにごあいさつするんだって。どんなひとかな?
ボスのおへやにはいるまえに、せなかにはねがはえてるヘンなおんなのことあった。はねはちょっとオカシイけど、キャンディもってそうなカワイイこだ。ボクはほんのちょっとだけゲンキがでたけど、おにいちゃんのボスのへやにはいったしゅんかん、ゲンキはどこかにとんでいってしまった。
「オマエ、遅すぎ」
ボスはこわいカオをしていて、やさしいおにいちゃんにどんどんイジワルなことをいっていく。
ひどいよ。おにいちゃんがちょっとやさしいからって・・・!
「とっとと部屋に行って、荷物片付けな」
そういうとボスはつくえのうえのしょるいをよみはじめちゃった。
おにいちゃんにてをひかれてボクたちのおへやにやってきた。ダンボールがいっぱいつんである。
「おにいちゃん。ここおかしいよ。かえったほうがいいよ」
おへやまでくるとちゅう、さっきのへんなクサをアミもっておっかけるくろいオジサンとか、ライオンのえにはなしかけるおとこのひととか、ヨロイのかげにかくれてるカオのおおきなひととか、ドクターのところにすんでるひとたちよりもコワイ。ほら、いまだって、ドアのむこうからへんなこえがきこえてくるし。ボスもイジワルだし、こんなとこで「にんむ」をしなきゃいけないなんて、おにいちゃんがかわいそすぎる。
でもおにいちゃんはあいかわらずニコニコしていて、なにかいおうとくちをひらいた。
「カッパーっ♪」
おにいちゃんがひとこともしゃべらないうちに、どこからともなくさっきのボスが現れた。
またおにいちゃんをいじめるきだな?
ボクはおにいちゃんのまえにたって、ボスをキッとにらみつけてやった。
「なんだ〜?オマエ。どっから入った?」
こいつ・・・さっきあったときボクにきづかなかったのか?ムカつく!!!
「でてけ!」っていおうとおもったのに・・・。
ヤツはゴソゴソとポケットを探って何かを差し出した。
「あたしはキャプだよ。コレやる。ほ〜れ!」
「キャンディ!!!」
ヤカタはちょっとコワイけど、キャンディはちゃんとあるみたいだ。それも、いままでたべたなかでサイコウにおいしい!
キャプはあっちでおにいちゃんとビデオゲームしてる。そんでたま〜に、こっちにキャンディをなげてくれるんだ。
こんなおいしいキャンディがたべられるなら、ボクはエイキュウにここからはなれないぞ!!!
END