その日は休日で、朝からゲームをしようと思ってたんだけどワカバちゃんにお使いを頼まれた。
「この地図の場所に行って、メモに書かれているものを買って来い。」
地図に印されている場所は、ここからだと少し遠くてメモにはなんて書いてあるのか分からない。だって、字じゃないんだ。これってワカバちゃんの足跡じゃ・・・。
でも最近、任務も少なくて暇だったから引き受けることにした。お駄賃くれるって言うしね!
キャンディーと一緒に館を出て丘を下ったところでウィッカのお兄さんのマモンくんと、そのお友達のデビルくんにバッタリ会っちゃった。ウィッカに会いに来たはずなのに、ボクがお使いに行くと言ったら「おもしろそう!ボクたちもいく!」だって。うん、みんなで行った方が楽しいよね!
4人になったところでちょっと問題が起きた。丘を下って東の方に向かうと、川が流れている。だけど昨日の夜、すごい風と雨が降ったせいで流されちゃったみたい。そこにあるはずの橋が見当たらなくなってる。
「どうしよう。」
「およいでわたる?」
デビルくんとマモンくんも腕を組んで考え込んでしまった。キャンディーは相変わらず「キャンディー!」と言いながらポケットに飴玉を入れたり、出したりしてるし。ああ、もう。本当にどうしよう。ここを渡らないと目的のお店に行けないんだけどな・・・。
みんなで首を傾げていると、どこからか金髪をツンツンに立てたお兄さんが現れた。迷子になったのか、「えれ?ここどこだ??」とキョロキョロ辺りを見回してたけれど、ボク達に気付いて話しかけてきた。
「なにしてんだ?」
あれれ?この声、どこかで聞いた事がある。それに近くで見ると見覚えのある顔だ。どっかで会ったのかな?思い出せない。
「実は・・・」
橋がなくなって川が渡れないと言うと、お兄さんは簡単に「あの木倒して橋にすれば?」と大きな木を指差した。それは本当に大きな大きな木で、斧とかあれば倒せるかもしれないけれど、ボクたちの力じゃ何日もかかりそうだ。無理だよ、とデビルくんたちが首を振る。
「なんだよー、情けないなあ!それでも男か?!オレの妹なんかこんな木、ちょっと蹴っ飛ばしただけで倒せるぜ?」
お兄さんはそう呟きながら木に近付いてハイキックを入れた。
「あんなんでたおせたらおのとかチェーンソーとかいらないよね。」
マモンくんがボクにこっそり耳打ちをした時だった。ギーって変な音がして、大きな木がゆっくり倒れんだ!これにはみんなビックリして、ポカンと口を開けてしまった。(キャンディーは相変わらずだ)
「すごい!!」
「かっこいい!!」
「キャンディー!!!」
みんなで大絶賛(?)すると、お兄さんは照れたように頭をかいた。その姿を見て思い出した!どこかで見たと思ったら、ボクの大好きなアニメに出てくるキャラクターのラスターにそっくりなんだ!外見だけじゃなくて声も!
「おにいさんもいっしょにいこうよ!」
「おつかいいこうよ!」
マモンくんとデビルくんが誘うと、お兄さんは「面白そうだな」と首を縦に振る。その仕草もラスターそっくり!そして極め付けがコレ!
「オレはラスター!イーストのラスターだ!よろしくな!」
アニメのキャラクターとおんなじ名前だ。嬉しくなってその事を告げるとラスターお兄さんはまた照れながら頭をかいた。
「うん、あれオレの仲間が作ってるんだよ。」
そしてボクがイーストピーク(アニメのタイトル)の大ファンだと知って
「んじゃ、今度紹介してやるよ」
と言ってくれた。
川を渡ったボクたちは一度、地図をチェックした。地図では道なりに行けば目指すお店に辿り着くみたいだけれど、その道は大きな森を囲むようになっていてかなり遠回りな気がした。
「この森、突っ切ればすぐじゃん!」
ラスターお兄さんの提案で、森の中に入ることになった。でもそこは昼間だというのに薄暗くて、ちょっと怖い。デビルくんたちは「うすぐらいのだいすき!」と喜んでいるけど、ボクとキャンディーはビクビクしながらラスターお兄さんの後ろにくっついて進んだ。そして少し行ったところで、開けた場所に出た。
「ちょっと休憩しようか。」
ボクはそう言って、出かけるときにキャプがくれたお菓子をポケットから引っ張り出した。マモンくんとデビルくん、それからキャンディーにも分けてあげたところで、ラスターお兄さんがいなくなってることに気が付いた。
「ど、どうしよう・・・」
みんなで動揺していると、茂みからガサガサ音がした。慌てて駆け寄ったら、人違いだった。
「よお、カッパ。オレ様のリサイタルを聞きにきたのか?」
出た!AD5のいじめっこ、フロボだ!彼は昔、ボクんちの近所に住んでいてよくいじめられた。フロボのリサイタルはとんでもなく音痴で、倒れる子も出たことがある。
「なんだおまえ!」
「あっちいけ!」
マモンくんとデビルくんが追っ払おうとしてくれたんだけど、逆効果だったみたい。ケンカが始まっちゃった。
「なんだとー!!ここはオレ様のリサイタル会場なんだ!お前らこそどっか行け!!」
「にゃにおーぅ!このおたんこなす!」
「なす!」
「キャンディー!!」
「言いやがったな!お前の母ちゃんデベソ!」
「なんでしってんだ?」
こんな感じでよく分かんない言い争いが続く。ボクは参戦することが出来ず、ただ見守るしかなかった。
「何やってんだよ。」
突然ラスターお兄さんが現れた。どこに行ってたんだろう、上手に立てたツンツン頭にはクモの巣がいっぱい絡み付いていて、淡い水色のTシャツには赤い斑点模様の染みが出来ている。左手で何かを引きずってきたのでよく見たら、それは大きなクマだった。
「あ、コレ?いきなり襲いかかってきたんだ。今日の夕飯になるかな?」
そんなラスターお兄さんを、目を丸くして見ていたフロボは
「ちくしょー!子供のケンカに大人が出てきちゃいけないんだぞ!」と叫びながら一目散に逃げてった。もう子供じゃないのに・・・。
気を取り直してボクたちは先に進む事にした。ラスターお兄さんは仕留めたクマをかついで先頭を歩く。そのすぐ後ろにマモンくんとデビルくん。そしてキャンディーに、最後がボクだ。
ラスターお兄さんはズンズン進んで行くけれど、なんだかさっきから同じところを回っている気がするのは気のせいかな・・・。しばらくすると、また開けた場所に出た。でもここ、さっきフロボと遭遇した場所だ。
「ラスターお兄さん、もしかして方向音痴?」
恐る恐る聞いてみると「そうかもな!」って元気のいい答えが返ってきた。困ったぞ。このままじゃお店にたどりつくどころか、夕ご飯までに館に帰れない。
「しるしつければいい!」
「しるしつけよう!」
マモンくんとでビルくんがいいアイディアを出してくれた。そこでラスターお兄さんはマモンくんのクレヨンを借りて、木に目印を付けはじめた。
そんなわけでどうにか森を抜けてさっきの川まで戻れたのは夕方になってからだった。真っ赤な空に一番星が光っている。
「良かったー、夕ご飯には間に合いそう。」
ボクは安心して胸をなで下ろした。それはマモンくんとデビルくんも同じみたい。
「パパにどなられなくてすむな。」
「うん、オノこわいもんね。」
二人はよく分からない会話をして、大声で笑っていた。
川を渡って館へ続く丘のふもとでボクたちは別れた。去り際にラスターお兄さんが「今度はサミーも連れてくる!」と言ってくれたのが嬉しかった。(サミーはイーストピークの主人公!)
館の扉を開くと、キャンディーはただいまのかわりに「キャンディー!」と奇声を上げて部屋に帰っていった。その声に気付いたのか、ダイニングに続く廊下のドアからワカバちゃんが出てきた。彼女はボクが手ぶらなのを見て不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「頼んだものはどうした?」
うわぁ、しまった!森から抜け出すのに必死になって、すっかり忘れてた!ごめんなさいの意味を込めて少し上目遣いでワカバちゃんを見つめたけれど、効果なし。
「貴様は夕飯抜き!」
ええ?!そんなー!!歩き回ってお腹ペコペコなのに・・・。絶望的な気分で佇んでいると、いつの間に現れたのか壁に寄りかかって腕を組んでいたキャプが「ちっ」と舌打ちをした。するとワカバちゃんは一瞬ビクッと身体を震わせてボクの肩を叩く。
「いや、わかった。育ち盛りに食事抜きは酷だからな。後日また行ってもらう事にしよう。」
あれ?なんかよく分かんないけど助かったぞ。ほっと胸をなで下ろし、夕ご飯を食べるためにキャンディーを呼びに行く。ご飯だよ、と声をかけると駆け寄ってきた。お腹すいてたんだね。あんなにキャンディーいっぱい食べてたのに・・・。
夕食後、ボクたち兄弟はすごい勢いで眠りについた。とっても疲れていたからだ。でも楽しい遠足だった。また行きたいなー・・・
おしまい