今日はAD6のメンバー全員が揃ったウェルカム・パーティ。

ぶっちゃけあたしはこの催しに全く関心がない。

だってさ、酒は好きなところでリラックスして飲みたいじゃん。あー、畳が恋しい。ま、1人で飲むときより酒とつまみは充実してるから、1時間くらいは我慢しよう。(歓迎する気全くナシ)

今日はいつもの長〜いテーブルがどこへやら。ダイニングは立食パーティ仕様に整えられ、丸テーブルがところどころに並べられ、端っこにソファなんかも運び込まれている。畳運び込めってんだよ。

ワカバが歓迎のスピーチなんかしてるけど、あたしたちエンジェルはもちろん、AD6の新メンバー君たちもろくに聞いてやしない。

ヒヨコは一見聞いてそうに見えるけど、よく見るとワカバの牙を熱心に観察してるようだし(多分虫歯チェック)、キリンはそわそわとあたりを見回してる(多分クサを探してる)。そのクサはというと、キリンの死角を狙って彼の背中に張り付いてるし、シューはテーブルの下から熱心にワカバの方を見ているが、様子を窺っているだけで話は聞いてないだろう。カッパも、キャプがキャンディを背後でばら撒いてるせいで弟くんが落ち着かず、右往左往していた。おおかた、弟くんを追いやって、カッパを独占しようというキャプの作戦なのだろう。そして、当然アナはテーブルに腰掛けてヒヨコをうっとり見つめてるし、あたしもこうして一番後ろの壁に寄りかかって全体の様子を眺めてるだけだ。ワカバ・・・ほんとにこのメンバーで大丈夫なの?

ワカバはワカバで、ちょっとスピーチするのがかったるかったらしい。「じゃ、あとはテキトーに」という一言でスピーチが締めくくられ、なんともだらけた空気の中、みんな思い思いにグラスに飲み物を注ぎ、宴は開始された。

 

こういう無礼講の場でも、あたしにとっては立派なリサーチのチャンスである。これから彼らのことをよく把握して研究を進めなければならない身だ。現在資料に載ってないデータも、少しずつ集めてファイルに追加していかなければならない。

早速AD6のリーダー格のヒヨコに目を向けると、やはり思いっきりアナに絡まれていた。アナはステッキをフル稼働させて、次々とカラフルなカクテルをテーブルの前に並べている。それをヒヨコが拍手しながら見ていた。

彼は一体どのカクテルを選ぶのだろうか。並んでいるのは、カシスオレンジ、スクリュードライバー、サイドカー、ピニャコラーダ、チャイナブルー、ディタモーニ、グレナデンってとこ?でもこれって女の子向けなのばっかじゃん。アナの好みか?

彼の好みをチェックするチャンスだったのだけど、残念ながら片っ端から飲んでいくのでよくわからない。最後にアナのオリジナルなのか、1.05秒ごとに色が変わる変なカクテルが出てきたところで観察をあきらめた。

「ヒヨコ、カクテルはザル飲み、っと」

次はキリン。キリンはビール片手に、キッチンにつながるカウンター付近で踊っていた。おそらく運び込まれる食べ物をチェックしてるに違いない。体をくねらせながら、ダイニングに入ってきたばかりの料理を覗き込んでいる。その背中に必死でへばりついているクサ。たまに手だけ伸ばしてしっかりつまみ食いはしている。

・・・見なかったことにしよう。

でも、飲んでる酒はしっかり手元のマイクロコンピュータに打ち込む。

「キリン、ビールを飲む。(点が入らないとどっかのメーカーみたいだ)」

今度は誰を観察しようかと視線をずらすと、オレンジジュースを飲みながらゲームの話題で盛り上がるキャプとカッパの姿が目に入った。そういえば彼はまだお酒が飲めない年だった。

おそらく弟くんはキャプの策略に引っかかって、部屋に戻ったのだろう。既にダイニングから姿を消していた。

「カッパ、オレンジジュースと。クリスマスはシャンメリーを用意してやろう」

最後はシュー。再び室内を見渡すと、中央よりややキッチン寄りのテーブルの下から周囲の様子を窺っていた。

こいつは、誘われないと飲めないやつっぽいな・・・。

どうやら宴の間、これ以上特に注目すべき点はなさそうだ。あたしは傍らの一升瓶を引っ掴んでシューのところに向かった。

「シュー、飲むよ!」

ドカッと一升瓶を置くと、シューは一瞬ビクッとしたものの、言われるがままに酒を飲み始めた。(どうやら初めて飲んだみたいだが、これ以降あたしの部屋でよく飲んでるので日本酒が好みらしい)

 

宴も酣。みんないい感じに酔っ払って(ラリって)きたころ、ソレは起きた。ピョコピョコと中央に進み出たクサが、その場で高速回転を始めたのだ。

嫌な予感がする・・・。

そう思って、あたしはそっとダイニングを後にした。

暑苦しいダイニングを出たとたん、シャワーで汗を流したくなった。まだ酔いが残ってるけど、これくらいなら大丈夫だろう。一旦自室に戻ってから、お風呂に向かう。

「あれ?ウィッカもお風呂?」

ドアの前にキャプがいると思ったら、彼女もお風呂に入るとこだったらしい。

「キャプも抜け出したんだ。なんか無駄に疲れたね。あのウェルカム・パーティ。」

「うん。もうちょっとカッパとゲームについて語りたかっ・・・いや、カッパに任務の心得を説きたかったんだけど、ヤツがコナ撒き始めてね・・・」

やっぱり。としか言いようがない。アイツほんとに迷惑千万だな。

「じゃ、温泉浸かってくつろぎますか〜」

そう言って脱衣所へ足を踏み入れると、奥の泉の前でアナがしきりにステッキを振りかざしていた。

「・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・。」

思わず2人でその場に立ち竦む。

「あれ?キャプとウィッカじゃない。来て来て☆」

言われるがままアナのもとに足を運ぶと、泉に何かが映っていた。

「それ・・・どこ!?」

泉に映し出されていたのは、見渡す限りの草原。しかもかなり標高が高そうな景色だ。まるでアルプス。うん、まるっきりアルプス。ヒツジなところもアルプス。

「なんかさ、ヒツジいるね。てか、なんでヒツジ?」

同じことを思ったらしく、キャプは誰に言うでもなく呟いた。

「まあ見てて♪」

楽しげなアナは、またステッキを振って、少しずつ右に視点をずらしていく。すると、少しづつ焦点を合わせながら、なんだか見覚えのある姿が映し出された。

「ヒヨコ!?」

ヒヨコは少しあたりをキョロキョロ見渡しているが、やがてヒツジを見つけるとニッコリ微笑んで撫で始めた。

「や〜ん!さすがヒヨコ☆」

アナはなんだか喜んでるけど、いいのかよ、ヒヨコ。突然そんなとこ飛んじゃって、普通困るだろうに。

「アタシちょっと行ってくるねっ!」

アナはそう叫ぶと泉に飛び込んだ。一瞬にして泉はただの水面になった。

「ちょっとー。あたしのカッパはどうなったのよ!?」

ものすごく不満げなキャプの抗議も気持ちはわかるが、あたしだってシューが気になる。もっとも、シューはどんなときでも冷静に辺りを観察して行動するから心配はないだろうけど。

ともあれ、コレはデータ収集のチャンスかもしれない。水鏡で1人ずつ観察しよう。

あたしが呪文を唱えると、先ほどのアナの魔法のときのように少しだけ水面が揺れ、アルプスの草原が映し出された。

ヒツジと戯れるヒヨコとアナ・・・そこへ、森の方から大量にコケモモを抱えたキリンが猛ダッシュで走ってくる。ヒヨコのもとに辿り着いた直後、アナが全てひったくっていた。「コケモモはあたしの専売特許なの!」とでも言っていたに違いない。声まで聞こえないのが残念だ。

「とりあえずキリンも無事みたいだね・・・(どーでもいいけど)」

キャプは一応上司だから、メンバーの無事を確認しなきゃならないという責任感から発言したようだが、あたしにとってはキリンなどどうでもいい。そもそもヤツはクサのコナを摂取し慣れてるはずだから心配する必要などない。

さらに呪文を唱えると、視界が少しづつ左に移動し始め、やがて小さな小屋を映し出した。窓もドアも閉まっているし、そのまま視界を動かしていこうとした、その時。

「あ。カッパだ!」

キャプの声に、あわてて動きを止め小屋の中を注視すると、窓ガラスの向こうで、カッパがカゴたっぷりに摘まれたコケモモを摘んで眺めていた。

「またコケモモ・・・」

「なんでコケモモなんだろうね・・・。カッパが無事みたいでよかったけど♪」

次はシューを探さないと。そう思って視界を動かそうとしたら、カッパの奥に巨大なティーカップが置いてあることに気が付いた。そして、その中から見覚えのある髪型と、用心深げに辺りを窺うシューの目がちょこっと姿をのぞかせている。

「いたっ!」

あたしは思わず叫んでしまった。

これでアルプスに飛ばされたメンバーの無事は確認できたわけだけど、これからどうする気なんだろう。クサがばら撒くコナでパラレルワールドに飛ばされたことがないあたしには全く検討がつかない。

そのまま様子を見ていると、カップの中から完全に顔を出したシューとカッパがなにやら相談していて、しばらくすると2人はカゴを抱えて小屋の外に姿を現した。

そのまま、ヒツジと戯れているヒヨコとキリンとアナのところへ向かう。

「なに相談してたんだろうね?」

キャプと思わず顔を見合わせた。

2人は目的地まで辿り着くとコケモモを一つずつ配り始めた。今度はアナもひったくったりしない。専売特許とかなんとか言ってたけど、ただ単にキリンが気に入らなかっただけなのだろう。

そしてそれぞれがコケモモをひとかじりした瞬間、全員が煙のように消えてしまった。その瞬間、背後から声がして思わず飛び上がった。

「コケモモ・ワープで帰ってきましたぁ☆」

アナだった。

 

その後、彼らは皆ダイニングで倒れていたらしい。クサも含めて。クサは皆と一緒にパラレルワールドに飛んだのではなく、高速回転しているうちに目を回したに違いない。その証拠に、クサの周りだけ円形に、コナが降り積もっていなかった。

彼らはバラバラに目を覚まし、パラレルワールドに飛んだときに大きな負担を受けた重たい体を引きずりながら部屋に戻ったらしい。翌日も、ヒヨコを除いて全員が朝食の時間に遅れた。

ダイニングは執事やメイドたちによってきれいに片付けられたが、ばら撒かれたコナの効果で作業がなかなか進まず(マスクしてても長時間大量のコナに接しているパラレルワールドに飛んでしまうらしい。アルプスではなく真冬のヒマラヤに飛ばされた執事もいた。)、あまりにも迷惑だったのでワカバより「コナばら撒き禁止令」が出た。そんなもの、禁止されなくてもばら撒くべきじゃないのだけど。

キャプとあたしは、温泉を満喫しないうちに酔いも醒め、なんとなく損した気分で(それなりにデータは取れたけどね!)お湯に浸かり、早々に部屋に戻った。

 

さて、このパーティで楽しい思いをいたのは誰でしょう?

(「それはア・タ・シ☆」)

 

 

 

END

WHOS THE WINNER OF WELCOME PARTY