新年明けましておめでとうございます!ADメンバーのリーダとして頑張るので、本年もよろしくお願いいたします!!これからおせち料理を美味しく頂くところです!!!

 昨年引っ越してきたこの館はどう見ても洋風。カウントダウンやって、ニューイヤー・パーティでもするのかな、って思っていたんだけど、どうやら年末年始は和風に過ごすのがルールみたいだ。ウィッカがいるからかな?

 大晦日は、注連縄とか榊とかで何故か和式に飾り立てられた礼拝堂に集まって、キャプとアナとウィッカの三人で作ったというお蕎麦を食べたり、みんなで甘酒って言う日本のお酒を飲んだりして過ごした。あと、「ジョヤノカネ」ってやつが必要とかで、ウィッカがいつの間にか持ち込んでいたドラを108回打ち鳴らすのを聞いたりしたなぁ。

 年が明けてからは、キャプからやり方を教わって、マリア像の前に用意された木製の箱の中にお金を投げ入れてお願い事をする「オサイセン」っていう儀式をして、各自お守りのお札や矢を貰った。これはお部屋に飾るんだってさ。

それから「オミクジ」っていう占いの紙を引いたんだけど、「ダイキチ」っていうので、これはとても運勢がいいんだって。どんな風に運がいいのかは、文章が難しいから全く読めなかったけど、折りたたまれた紙の間に小さな金のお守りが入っていて、それがとても綺麗だったから嬉しかった。なんとなく形がアナに似ているような気がしないでもないんだけど。(そういえば、この「オミクジ」を準備したのはアナだったな・・・)

 色々なお正月の儀式を終えて部屋に戻ったのは午前2時過ぎ。お正月だから、朝食に集まるのは10時だって。お腹がすいてしまいそうだけど、ご馳走が準備されてそうだから我慢しよう。

 僕は部屋に戻って決められた場所にお札と矢を飾ると、ご馳走を思い浮かべながら眠りについた。

 

 午前十時。ダイニングのドアを開けると全てが和式に調えられていた。

部屋中に敷き詰められたタタミ。ダイニングテーブルの代わりに出現した長いコタツ。両脇には一枚ずつ座布団が並べられ、ワカバが座る上座には鶴が描かれた金の屏風の前に10段の座布団がそびえたっていた。コタツの傍らには、丸火鉢が置いてあって、モチが膨らんだり縮んだりしている。

 「モチ!!!焼けてるクサ。アチィーッ!!!」

 誰かがわめいてる声がするが、あえて気にしないことにしよう。

 どうやら今日は僕が最後に到着したらしい。キリンもカッパもシューも、もうコタツに入ってぬくぬくしていた。

 「おはようヒヨコ!ボク今日は徹夜でゲームして過ごしちゃったよ。キャプとゾンビを倒しまくったんだ!」

 なるほど。カッパの目は真っ赤に充血している。あとで目薬をさしたほうがいいな。

 「オレはホールで一晩中踊ったぜ!おかげで筋肉痛だ」

 たしかに。背中を丸めて体を労わるように僅かな動きを見せるキリンの姿は、まるでおじいちゃんのようだった。心なしか髪の色も(色だけじゃなくて量も)薄くなってる気がするのは、気のせいだろうか。

 「ヒヨコにしては珍しく遅かったんじゃないのか?俺はいつも通りに起きた」

 そういえばそうだ。起きるのはそんなに遅くなかったつもりだが、いつもならアナが早くに部屋にやってきて早くに連れ出されてしまうから、集合のときは1番に到着している。今日はアナが来なかったから、普通に時間通りに部屋を出てきたのだ。

 「はいはいは〜い!!!お待たせしました!キャプ、アナ、ウィッカ合作の特製おせち料理の登場で〜す!」

 カウンターから、巨大な黒いウルシヌリの四角い箱が運ばれてくる。箱が五段重ねられ、一番上に蓋が付いている。金でマツが描かれていて、とても美しい。

 「あれは『オジュウ』ってういらしい。昨日ウィッカの手伝いをしていて教えてもらった」

 トレーニングに熱心なシューは、ウィッカと行動を共にすることが多い。ウィッカは、今でこそ研究などしているが、名門の武家育ちで幼い頃から修行して育っているから、何かとシューと話が合うらしい。「技は盗むものだ」というウィッカの言葉を忠実に守って、シューは何か技を盗もうとしているのかもしれない。

 「一の重には祝肴。田作り、数の子、黒豆が入ってま〜す。これはいつものシェフが用意しましたぁ♪」

 裏側に大きく「お品書き」と書かれた紙をアナが読み上げる。同時にウィッカが蓋を開けた。見慣れない食べ物だけど、和食というだけでなんだか体によさそうな気がしてくる。

 「二の重は口取りと酢の物。口取りは伊達巻と栗きんとんと昆布巻きとかまぼことお多福まめ。酢の物はなますと蛸と・・・ああ面倒くさい。このお重種類が多すぎ!・・・これはウィッカが作りました。シューも仕込み手伝ったんだよね?」

シューが照れたようにほんのちょっと微笑むのを見てから、ウィッカが1段目のお重を持ち上げて二段目を見せる。やはり食べたことのないようなものばかりだったが、玉子焼きみたいなのとか甘いにおいのするクリームみたいなのとか色とりどりで、トライするのが楽しみだ。

 「お次は三の重、焼き物なの。鯛と海老と鰻でぇす!アタシが作ったんだヨ♪ホントは鰤も入るはずだったんだけど・・・材料調達してくれた友達が渋ってねぇ・・・」

 アナが普段見せないような怖い顔をしてあらぬ方向を眺めているが、お構いなしにウィッカが三段目を開けた。

デカッ!!!

今まで見たことが無いような巨大な鯛と海老と鰻が一匹ずつ、箱の中に押し込められていた。もう死んでいるから魚たちはなんとも思ってないだろうけど、見てるこっちが息苦しくなってくる。

どこか違う世界に意識が飛んでいたアナは、まだカウンターの向こうに控えているキャプに突っつかれて気を取り直し、また続きを読み始めた。

「そして与の重は煮物。キャプが作りました。野菜がいっぱい入ってるよ!」

アナの解説はどんどん手が抜かれていっているが、そろそろお腹がすいてきたのでどうでも良くなってきた。でもそんなこと言ったらキャプからお仕置きを受けそうだから口には出せない。

ウィッカが4段目を開けて見せると、今までで一番抵抗無く食べられそうな料理が出てきた。他のものをトライしてダメでもこれなら安心だ。

「そして最後は・・・ワカバが用意しました!」

「えっ!?」

アナが言いかけると、シューが突然声を上げた。

「どうした?」

小声で尋ねると、同じように小声でシューが答える。

「昨日ウィッカから聞いたところによると、5段目は「控え」って言って、何も入ってないはずなんだ」

そうなんだ・・・。ワカバが準備したってことは、何かきっと仕掛けがあるんだ!

アナもこちらの会話を聞きつけたようで、もったいつけてなかなか発表しない。

5段目は・・・・!と、その前に!!!」

「ワカバの新年の挨拶からはじめるよ!」

キャプが代わって言うと、奥から、念入りにブラッシングした茶色い毛を輝かせながらワカバが現れた。隣に控えるキャプは、朱塗りの巨大なお銚子を右手に提げ、左手には同じく朱塗りの盃が三段に重ねられたものを持っている。シューが耳打ちしてくれたのによると、あれで「オトソ」という特別な薬が入ったお酒を回し飲みするのだそうだ。小さい盃から年の若い順番に回すらしい。

ワカバはキャプを従えて上座まで辿り着くと、十段座布団にどっかりと座る。結構大柄なのに全くグラつかないところを見ると、かなりのバランス感覚の持ち主だと言える。さすがワカバ!

「あけましておめでとう、諸君。昨年よりもハードな任務が増えると思うが、今年もしっかり取り組んでくれたまえ。」

ワカバの新年の挨拶はあっさりしてた。あまり回りくどいことをしないところがこのボスの長所だと僕は思う。

「さて、皆も気になっていると思うが、食事に入る前に酒の回し飲みしてから5段目の箱を開ける。そして中に入っているある物を一人一つずつ選びたまえ。その選んだものによって、我がみなに贈り物を与えよう。その後は無礼講だ。正月のご馳走を存分に楽しむといい」

ワカバがそう言い切ると、キャプが盃に酒を注いで年の順に飲ませて回る。若い順だから当然カッパの弟のキャンディが一番目だ。

この子はキャンディ意外に全く興味が無いらしく、散々嫌がってキャプを手こずらせたが、とうとう抱きかかえられてほんのちょっと口にすると真っ赤な顔をしてヘラヘラ笑いながらコタツに体を預けた。この分だと料理は食べられないだろう。

「コイツは失格だな」

キャプにも断言されてしまった。

カッパは隣で座布団を半分に折って即席枕を準備し、そっと寝かしつけてやる。そして差し出された盃にちょっと口をつけて、ニコッと笑いながらキャプに返した。弟を見て苦手なお酒対策を思いついたのだろう。なんだかんだいっても、キャプがカッパのスマイルに弱いことを知っているに違いない。

あとのメンバーは何の抵抗もなく酒が飲めるのであっという間に三順した。キャプはゆっくりとした動作でオトソの片付け、みんなの緊張感もいやおうなしに高まる。

何かもらえるのは嬉しいことなのだが、ワカバの考えることだ。何か驚くような仕掛けがあるに違いない。単純には喜べない。

ようやくカウンターから戻ってきたキャプは四段目のお重に手を掛け、いよいよ五段目の中身がお目見えする。皆が一斉に息を呑んだ。

「五段目はこれっ!」

キャプの声とともに、皆の視線が一点に集中した。

中には、6つのつぶれた雪だるまのような物体が、白い粉をまぶされて鎮座していた。

「何これ!?」

すかさずカッパが疑問を口にした。ほんのちょっとの誤差はあれどもほとんど同じ形をしている奇妙な物体を、なんだか分からないまま選ぶなんてちょっと難しい。

しかしワカバは目を瞑ったまま微動だにせず、キャプもアナもウィッカも興味津々な表情でこちらを眺めているだけである。

「あれは『カガミモチ』。111日に割って食べるはずのものだが・・・」

キリンとカッパがつついたり眺めたりしてる隙に、シューがこっそり教えてくれた。

「柔らかい・・・。そしてオコメの匂い・・・分かった!ワカバちゃん、これってライスケーキだよね?」

今度は鼻を近づけてクンクンしていたカッパが、ワカバにそう尋ねる。

「いかにも。そして搗きたてだ」

目を閉じたままワカバが答えた。

「つまり、このライスケーキを食って、中に入っているものでプレゼントが決まるってわけだな!よぉし・・・クリスマスの分を挽回するぞ!ウォーッ!!!」

キリンがこのゲームのルールに気付き、いつも以上に気合十分な雄叫びを上げると、それぞれの『カガミモチ』に顔をギリギリまで近づけて品定めを始めた。カッパも負けじと箱の縁に手を掛けて身を乗り出している。僕もカッパの肩越しに箱の中を覗き込んだ。

「あれ?」

よく見ると、6つあったはずのカガミモチが5つに減っていた。いや、そもそも6つというのが見間違えだったのか。目をこすってもう一度目を凝らしたが、やはり5つしかなかった。気にするのはやめておこう。

「ボク、弟の分も選ぶよ」

カッパは一番手前にあった全体にやや小ぶりのものと、その隣にあった粉が少なめのものを選んだ。弟はたくさん食べれないし、そもそもキャンディー以外のものはそんなに食べないと判断したのだろう。

カッパが早々に決めてしまい慌てたキリンは中央の粉がいっぱいまぶしてあるものを選んだ。

「オレはこれにするぜ!」

残りは2つ。僕もシューに先越されないように、一番上下のモチの形が整ったものを選ぶ。手に取ってから振り返ると、シューは腕組みしたまま表情を変えることなく座っていた。

「最後になっちゃったけど、アレでいいの?」

「これでいいんだ」

シューは僕の言葉にも動じることなく、最後のカガミモチを手に取った。

「これで皆選んだようだな。では一斉に鏡餅を食べてもらう」

ワカバはやっと目を開き、みんなを見回してから言った。

「それじゃ、3カウントするからゼロで一斉にかぶりつくように!」

ジャッジのキャプがみんなの様子を見ながらカウントを始めた。

「3」

皆一斉に自分のカガミモチを見つめる。(キャンディは寝たまま)

「2」

それぞれに深呼吸して心の準備をする。(キャンディは寝返りをうった)

「1」

キリンとカッパがギュッと目を瞑った。(キャンディは大きな欠伸をした)

「0!!!」

みんなが一斉にカガミモチにかぶりつく。(キャンディの口にはカッパが押し込む)

「「「!!!!!!!!!!」」」

声にならない叫び声をあげたのは3人。いや、2人か。

キリンが食べたモチの白さに映えて、なにか真っ赤なものが見え隠れした。また、カッパの横ではキャンデイが苦しげにもがいている。

ハズレは2人か・・・。

心の中でそう呟いたとき、それはやってきた。えもいわれぬ独特の気体が口の中に充満し、鼻がつーん、と押さえたくなるくらい痛み出したのだ。

「ふがっ・・・・!」

 

一瞬意識が飛んで、また戻ってきたが、今度は喉をヒリヒリ刺激を感じる。

「なに・・・これ・・・」

「ハズレを引いちゃったのはヒヨコみたいだね」

キャプがのんびりとした口調で言った。

「それ、ワサビだよ。ワカバ特製の」

通常の刺激の10割り増しなんだよね〜、というウィッカの言葉が耳に入ってきたが、頭がぐらぐらして思考は完全に停止している。どうやったらこの不快な状態が治まるんだ!?

「コケモモ・キュア〜!!!」

アナの声が頭に響いて、ようやく全てがおさまった。

「大丈夫?ヒヨコ。そんなくじ引いちゃっても、あたしがついてるから全部撤回だよっ!!!」

    ・・このときほどアナが頼もしいと思ったことはない。

 

このカガミモチ・ルーレットの結果は、シューの勝利だった。彼曰く、「残り物には福がある」とウィッカから教わったのだそうな。シューのモチの中身はつぶあん。なんでも魔よけ効果があるとかないとか。

次点は意外にもキャンディ。ワカバに失格を言い渡されてはいたが、カッパの気遣いを評価して参加が認められた。入っていたのはこしあんだった。アンコが入ったモチのことをアンビンモチって言ったりするらしいけど、これはウィッカ情報じゃないから正確かどうかわからない。

3位はキリン。叫んでたからハズレかと思ったのに、これも意外だ。中身はキムチだった。ウィッカがモチ+キムチが好きだかららしいが、キリンはキムチはあまり得意ではないようだ。

4位はカッパ。中には何も入ってなかった。食いしん坊のカッパとしてはとてもがっかりしたようだが、僕が食べた刺激十倍ワサビを食べてないからそんなことが言えるんだよ。

そしてご存知、5位は僕。僕がビリだと思ったんだけど・・・。

「失格1名!」

皆驚いて、言葉を発したキャプに視線が集中する。

「プラントだ。カウントに合わせて食べなかったどころか、まだ火鉢でモチを焼いてる」

一斉に火鉢を振り返ると、程よく色づいてきたモチを載せた火鉢と、その横に薄っすら浮かび上がったプラントの姿が目に入った。そして皆一斉にため息をついた。やっぱりカガミモチは全部で6つあったんだ!

「さて。それでは諸君に贈り物をしよう」

ワカバの声に皆気を取り直し、居住まいを正した。

ワカバは懐から5つの小さな封筒のようなものを取り出すと、シューから順番に呼んで、一つ一つ渡していく。全員に行き渡ると、立ち上がって言った。

「それはお年玉だ。地下帝国で使えるお金が入っている。無駄遣いしないように使いなさい」

まるでお小遣いをくれるときのパパ・・・いや、ママみたいだ。そういえば、僕達は越してきてから買い物に出たことがなく、お金のことはさっぱり気にしていなかった。さすがワカバ、気が利くなぁ!

 

ワカバが引き上げてからは無礼講。みんなでお年玉を何に使うかで盛り上がりながら、御節料理を食べた。不思議な味がするものもいっぱいあったけど、後から出てきた執事たち製作のお雑煮が美味しかったなぁ!!!

 

 

 

                         おしまい

悪魔の屋敷のお正月

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