朝からアナの「ムツゴロウパワー☆メイクアップ」で目が覚めた。

最悪の一日になりそうな予感を抱えながら、もう一度目を閉じようとしたあたしの耳に、今度はウィッカの怪しげな呪文が聞こえてくる。

 

くそぅ!休みの日くらいゆっくり寝かせろよ!

朝が早い同僚を持つと身が持たない。

 

完全に目が冴えきったあたしは、ベッドから滑り下りると着替えをすませ、鏡に向かう。

 

昨日は朝方までカッパとゲームをしていたせいでクマがひどい。

まあ、いいか。メイクでごまかせる。

 

 

支度を終えて廊下に出ると、突然アナが飛び出して来た。

 

「キャプ、大変!!」

 

お前の「大変!!」は分かってる。どうせヒヨコ関連だろ?案の定、アナの口から飛び出したのは「ヒヨコ」

 

「ヒヨコがアナを置いてお出かけしちゃったの!!こんな早い時間から…もしかして、浮気?!」

 

妄想激しすぎ!ヒヨコだって一人になりたい時くらいあるだろうさ。

このプチ(てか、かなりの)ストーカーが!!

 

「ヒヨコなら館の裏にある礼拝堂に、朝のお祈りしに行ったよ」

 

うわぉ!び、びっくりしたーー!

いつの間にか後ろに、長い黒髪をアジ●エンスさせながら(なんじゃそりゃ)不適に微笑むウィッカが立っていた。

 

「そう…さすがはアナのヒヨコ☆信心深いのね!サイコー!!」

 

言うが早いか、くるりと回転して姿を消したアナ。あーあ、ヒヨコ…ご愁傷さま。

 

「飯、食うか…」

 

アナのいなくなった空間を見つめながら呟くと、ウィッカもあたしと同じように痛々しい顔をしながら頷いた。

 

 

「おはようございます、キャプ様。ウィッカ様」

 

ダイニングルームに入った途端、それまで朝食の支度をしていたメイドや執事たちが一斉に頭を下げる。

 

その時、ものすごい勢いで扉が開き、キリンが出現した。

「く、く、く…」

何笑ってやがるんだ?

と思ったら、その後に「クサーー!!」と続いた。完全にトリップ中だな、こりゃ。後でワカバに懲らしめてもらおう。

なんて考えながら睨みつけていると、どこからかミントの香りがする爽やかな風が吹き抜ける。

朝から眩しすぎる笑顔を浮かべ、ヒヨコ降臨!

その横にはべったりとアナが張り付いている。ゴクロウサン…

 

まったく、アナにも困ったものだ…って、えぇ?!

ど、ドアの陰で何かが動いた!

なんかいたよね?という意味を込め、横にいるウィッカを見るとうっとりした表情でドアを見つめている。

 

ああ、なるほど。

 

「シュー、休日の朝っぱらから訓練はやめてくれ」

 

呼びかけると、こっそりと濃ゆいお顔を覗かせた。

なんか、頭痛がしてきた…

 

だけど、大きくため息をついたあたしの目に天使が飛び込む。

 

「おはよう、みんな!」

 

おはよう!マイスウィートベイビー!

今日もなんて愛らしいんだ!!

 

「カッパ!いくら休みだからって、だらけすぎだ!パジャマぐらい着替えてから下りて来い!!」

 

なんて言ってみたけれど、そのちょっとダボダボなパジャマ姿がたまりません!(ジュル!)

 

「はぁい、ごめんねキャプ。」

 

「返事は『はい』だ!それから、『キャプ』ではなく『A』だろ!まったく…言葉遣いに気をつけろ!!」

 

しょんぼりした顔で引っ込んだカッパ。

ごめんね、後で新作ゲーム持ってお部屋に遊びに行くからね。そのときには『キャプ』って呼んでね。

 

 

「さて、皆そろったな?」

 

長テーブルにズラリと腰掛けた皆の顔を眺めてから、食事を始めようと思ったら、一人足りない事に気が付いた。

ん?上座のワカバはたいてい自室で飯を食うから、人数は揃っているハズ…

 

あたしから椅子一つ空けて(そこはアナの席なのだが、ワカバのいない時は席を移動しているので空席になっている)キリン、カッパ、キャンディー坊やの大きめチャイルドシート。それからあたしの向かいのウィッカ、ヒヨコ、その膝の上にちょこんと座ったアナ、それを不思議そうに横目で見るシュー。

なんだ、全員揃ってるじゃないか。

ん?いつもはシューの隣に誰かいた様な…

てか、いる?!

 

よーく目を凝らして見てみると、いるいる!

プラント!!

存在感が薄すぎて気付かなかったが、彼は嬉しそうにナイフとフォークを持って、食事を待っていた。

 

「さて、それじゃ飯にするか!野郎ども!!」

 

あたしは女の子よ!という目のウィッカとアナを無視して、世にも奇妙な仲間達の朝食が始まった。

今日は休日だ。この後は、それぞれが自由に時を過ごすだろう。

 

おいしそうに飯をがっつく皆を見回し(アナはヒヨコにあーんしてもらってるけど…)満足したあたし。

いつの間にか朝っぱらの嫌な予感も吹っ飛んでいた。

 

END

Breakfast