妖精の国のガラム・マサラ王の娘、プリンセス・アナベルがプリンス・チャーミングを探しに旅に出ると決心したとき、唯一彼女が持ち出した(連れ出した)ものがあった。
これは、そのアナベルが連れ出したものが繰り広げる、主婦の知恵とパワーと、ほんのちょっとの悲哀が混じった、心温まるお話である。(多分!)
プリンセス・アナベルがお城を出て1日目。
ローリエ「とうとう出てきちゃったわねぇ・・・」
ペッパー「プリンセスが突然お部屋に戻っていらして、旅の支度を始めたときは、ビックリしたわ」
バニラ 「あたしお気に入りのソープドラマ見てるとこだったのに・・・」
ホロキア「ま、どうにかなるものよ」
クローブ「・・・で、ここどこ?」
説明しよう!5人集まると姦しい程度じゃ済まされない彼女たちはキッチンおばさんず。プリンセス・アナベルが生まれたときから護衛や身の回りの世話をしてきた、超ベテラン主婦たちなのだ。フワフワと浮かぶ大きなハートのシャボン玉のまわりを、蝶のようにヒラヒラと飛び回っている。
ローリエ「それにしても、アナベル様はコケモモパワーが上達されたわね。あんなに長時間シャボンを維持していられるなんて」
バニラ 「それよりも、シャボンの中でのあのお可愛らしい座り方!アタシが小さい頃からお遊びのお相手をしてきただけのことはあるわ」
ホロキア「確かにバニラみたいに可愛らしいお召し物がお好きだけど、それはお似合いだからだわ。それに、あなたみたいに甘えっこじゃないしね。火のように情熱的な方よ!」
ペッパー「そうね。あのプリンセスが一目ぼれの恋なんて・・・刺激的!」
クローブ「時期国王になられるかもしれないから、お相手の方はあたしがしっかり教育するわ!」
城に連れ戻すどころか乗り気な彼女たちは、それぞれ旅の間プリンセス・アナベルのどんな世話をする係りになるか主張し、揉め始めた。
その時、シャボンの中から突然声があがった。
アナベル「うぇ〜!お腹すいたなぁ・・・」
当然、主張合戦は更に苛烈なものになる。
ローリエ「ランチはやっぱりサラダよ!」
クローブ「いいえ。シチューがいいわ!」
バニラ 「おいしいケーキがいいわよ!」
ペッパー「何言ってるの。サンドイッチでしょ!」
ホロキア「焼肉じゃーっ!(ガオー)」
お互い一歩も譲らない彼女たちを、アナベルは興味深げに眺めている。
ローリエ「もうお昼過ぎ。ランチに軽めに・・・ってあら?美容体操の時間・・・」
ホロキア「えっ!?あたしまだ掃除終ってないわ!」
クローブ「あたしも旦那が海外出張から帰ってくるから・・・」
ペッパー「幼稚園のお迎えの時間過ぎてるわ!」
バニラ 「今日特売日・・・」
言うが早いか、皆一斉にアナベルの膝の上の瓶の中に、吸い込まれていった。一瞬の出来事である。
アナベル「全然役に立たない・・・」
当然、アナの呟きが彼女たちに届くことは無かった。
頑張れおばさんず。キッチンは大事なアジト。彼女たちの活躍(?)はまだまだ続く・・・はず!