今日はとってもいい天気。
朝食前、散歩したついでに牛たちと水浴びしてたんだけどね。
小川から牛たちを上げて、「さて、僕も上がろうか」と思ったところで突然すごい力でグイッと上に持ち上げられたんだ。あっという間に目隠しさせられて、お花のいい香りがすると思ったら眠くなっちゃったんだ。
「さすがバニラ!」
「さ、急ぎましょ。プリンセスが待ってるわ」
なんか聞き覚えのあるような声を聞きながら、僕はすっかり眠り込んでしまった。
気がついたら、見慣れない部屋で何かにぐるぐる巻きにされていた。
この匂いは・・・アイビーだね。なかなかしっかり手入れされてる・・・じゃなくって!口までぐるぐる巻きにされちゃってて、全然しゃべれないんだけど。
もがいている僕をよそに、周りの人が話してる。
「アナベル、準備はいいかい?」
「うん。バッチリだよっ、パパ」
アナベル・・・やっぱりキミか!!!
必死でもがいてみるが、絡まったアイビーは一向に取れる気配がない。バタバタしていたら、ホロキアが「燃やすよ?」って言ってきた。おとなしくしていよう。
ファンファーレとともに誰かが歩いていく音がして、歓声が上がった。
一体なんなんだ?
先ほどアナベルとお話していた声が今日は何かのお祝いの集まりであることを告げている。さっきアナベルが「パパ」って呼んでいたから、おそらく妖精王ガラムマサラなんだろう。
「さあ本日の主役アナベルを紹介しよう!」
そのセリフを合図に、マーチングバンドが『ハッピー・バースデイ・トゥー・ユー』を演奏し始める。
そうか。今日はアナベルの誕生日だった。6月中は散々「ヒヨコ☆7月30日はアタシの誕生日だから、パーティには是非出席してね!!!」って言ってたのに、招待状がこなくて。館のみんなに、後日お祝いしようよって話はしてたんだけどね。
「みんなーっ☆今日はアタシのために集まってくれてありがとう♪」
「わしの愛娘じゃ!」
「あなた、アナベルが挨拶中よ」
アナベルのパパはなかなか出たがりみたいだ。
「今日はね、とってもいい嬉しいから、とってもいい天気になったんだよっ!」
「わしの誇りじゃ!」
「あなた、アナベルの邪魔しないで」
!???
「みんなが集まってくれて、もっと嬉しくなっちゃったから、気持ちのいいそよ風も吹いてきたねっ!!!」
言われてみれば、たしかに・・・。
「今日はアタシ、みんなのために新しいドレス作ったり、会場のデコレーション考えたりしたんだよっ!」
「なんと素晴らしい娘じゃ!」
「あなた・・・気持ちはわかるけど」
ママも親バカなのかな?
「どう?かわいいでしょ?エヘヘヘヘ☆」
「かわいい!実にかわいい!!!」
「あなた、もうちょっと抑えて・・・」
・・・・・・。
「ありがとう!!!それからね。今日はとってもステキな報告があるの」
なんだか嫌な予感がする・・・。
「あたし、今日婚約します!スペシャルゲストとして、その彼をみんなに紹介するねっ!」
も・・・もしかして、それは僕か・・・!
案の定、ずるずると引きずられてバルコニーにいるアナベルの隣まで連れて行かれ、そこでようやくアイビーが外された。
まぶしい!!!
「婚約者の、ヒヨコです☆」
僕が一言も発声しないうちに歓声が上がりかけたその時・・・
「Oh my gooooooooooooood!!!」
絵本で見たことがあるような、中世の王子様みたいな格好をした男性が大声を上げたのだ。
「My sweety, 婚約者はこの僕。プリンス・ギルバートだよ!」
みんなが一斉に彼に注目した。
「こんな・・・こん・・・」
混乱のあまり言葉が続かない。僕を指差しながらあわあわしているプリンス・ギルバートが気の毒になった。
そうだよね。キミは「王子様みたい」ではなくて「本物の王子様」なんだよね。ビックリしたよね。
しかしアナベルは意に介する様子もなく言葉を続けた。
「違うよっ!アタシのプリンス・チャーミングはヒ・ヨ・コ☆」
ドーン・・・!
あまりの出来事に、僕も口をパクパクさせたまま中庭に移動した。パーティ会場はアナベルお得意のいろんな形をしたシャボン玉がたくさん浮かんでる。シャボンの中にはオードブルとかシャンパングラスが入っていて、手を触れるとシャボンがはじけて中の物を手に入れられる仕掛けになっている。
これからは、ゆっくり会食と音楽を楽しむパーティ・・・のはずなんだけど。
「キミ・・・!一体どこの王子なんだ?」
やっぱり。早速プリンス・ギルバートに捕まってしまい、食事にありつけない。朝食もまだだったのに・・・。
アナベルはたくさんの人に囲まれ、祝辞を受けている。しょうがないので、僕は頑張ってギルバートの問いかけに付き合うことにした。
「王子じゃないけど?」
「!それじゃ、僕の愛馬ダイヤモンドみたいな立派な白馬を持っているのか!?」
「いや。水牛なら、今朝一緒に水浴びしたよ。角が立派なんだ!」
「!!それなら、剣の腕がいいのか!?」
「武器は好きじゃないんだ。大事なのはスマイルさ。ス・マ・イ・ル☆」
「!!!じゃあ・・・じゃあ、歌が得意なのか?僕は大得意さ。ラララ〜♪」
「歌は僕も大好きだよ。でもコーラス専門なんだ。みんなで力を合わせて歌うのがいいんだ!」
「・・・なるほど!僕では役不足だったというのか。幼馴染として、アナベルとの婚約を夢見て頑張ってきたのに・・・完敗だ!彼女を幸せにしてくれたまえ!」
そう言うと、マントをひるがえして彼は颯爽と立ち去った。
なんか、よくわからないけど納得してしまったらしい。僕、婚約したつもりないのになぁ。う〜ん・・・まぁいっか。
面白そうなオードブルを楽しんで、夜にはキレイな花火を鑑賞。なかなか充実した一日だと思ったのも束の間。帰る直前にアナベルに捕まった。
「さあヒヨコ!今晩から婚約記念旅行よ☆」
「ええ〜!!!?」
@オマケ@
ギルバート「おお!なんと美しい・・・キミこそが私の女神だ!!!」
キャプ 「ウゼーよ!(蹴り)」